原題 | 原題:雄獅少年 I Am What I Am |
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制作年・国 | 2021年 中国 |
上映時間 | 1時間44分 |
監督 | ソン・ハイポン |
出演 | 声:花江夏樹、桜田ひより |
公開日、上映劇場 | 2023年5月26日(金)~T・ジョイ梅田 なんばパークスシネマ、シネマート心斎橋 T・ジョイ京都、MOVIX京都 OSシネマズ神戸ハーバーランド 他全国ロードショー |
~中国発!獅子舞と労働のなかに光る青春の汗~
中国から、青春の汗が迸る瑞々しい3Dアニメ映画がやってきた!! 2021年12月に中国本土で公開されるや満足度ランキング1位に輝き、2022年3月、日本の「電影祭」(中華映画特集上映)での字幕版上映を経て、この度の吹き替え版完成・劇場公開へとつながった。
チュンはやせっぽちの少年。都会へ出稼ぎに出た両親の帰りを待ちわびながら、広東省の村で祖父とつましい暮らしをしている。いつも人目を避けるようにうつむくチュン。春節に沸き立つ広場でお年玉を横取りされてもうなだれるだけ。そんなとき救いの手を差し伸べてくれたのが獅子舞広報大使の少女だった。彼女から獅子頭を託されたことで獅子舞の世界に惹かれ始めるチュン。仲間のマオとワン公を誘い伝説の師匠の元を訪ねる。ところが、師匠はすでに引退し生活のため魚屋になっていた。よそのチームからは小馬鹿にされ、魚の配達ばかりさせられているにわかチームだが、目指すは両親のいる広州で開かれる競技会だ。果たして三人は大会出場にこぎつけられるのか!?
まずアニメーションの完成度の高さに驚く。中国アニメがこんなに凄いとは。キャラクターの活き活きとした魅力に加えて光や雨、風など自然の美しさ。そして何より獅子舞のシーンの迫力たるや!予備知識なく初めて見るというのに、ルールも自然と吞み込めていつの間にか競技の世界に引き込まれていた。悪魔祓いという謂れは共通だが、中国の獅子舞は二人一組になって地上数メートルの高さまで足場を組んだやぐらを登ったり、飛び石のように並べられた杭の上を獅子さながらに飛び移ってゆく。さすがは雑技団で有名な中国だと感心してしまう。実際にスタッフが監督チーム、絵コンテチーム、アニメチームに分かれ獅子舞の訓練を受け、撮影には実写の手法を多く取り入れたという。描く対象と表現方法がピッタリはまって、これが本当に素晴らしい。偉人伝やファンタジーがセオリーの中国アニメにおいて現実社会に切り込んだ本作は異質のようだが、だからこそ自由になれたとソン・ハイボン監督は語る。
挿入歌もポップなものから哀切なメロディまで原語の響きと字幕の歌詞が物語と溶け合い異国情緒を感じさせる。チュンがなかなか弟子として受け入れてくれない師匠に思いをぶつけるシーンでは李白の詩が引用され、お国柄が感じられる一方、チュンの切ない思いは万国共通で、大切な家族のために我が身を呈して尽くそうとするひたむきさに胸打たれる。夢を追うことが難しくなっている現代、それは日本も同じかもしれない。世界的な不況の時代に生まれて好景気を知らない若者たちを臆病者と笑うことはできない。しかし、苦境の中でも、悩み、もがき、自らの意思で何かを選び取ろうとする姿に青春の輝きを見た。そして、エンドロールにも小さなサプライズがあった。突然流れる日本語の曲に驚きつつ”のん”の思いがけず力強い歌声が響くと、作品世界と不思議な調和が感じられるのだった。
青春と言えばスポーツや音楽が真っ先に浮かぶ。もちろんこれも獅子舞という競技がモチーフなのだが、同時にチュンの労働者としての側面にも注目したい。筋力がなく細い手足でよろけながら働いていたチュンが、少年から青年へと見違えるように逞しくなってゆく姿がまぶしく、労働のなかにもかけがえのない青春の確かな手触りがあった。クライマックスシーンに響く太鼓のリズムに胸が熱くなること間違いなし!
(山口 順子)
公式サイト: https://gaga.ne.jp/lionshonen/
配給:ギャガ、泰閣映畫、面白映画、Open Culture Entertainment
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