(©Marcel Hartman)
原題 | 原題 La Brigade 英題 The Kitchen Brigade |
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制作年・国 | 2022年 フランス |
上映時間 | 1時間37分 |
監督 | 監督・脚本:ルイ=ジュリアン・プティ『社会の片隅で』 |
出演 | オドレイ・ラミー(『社会の片隅で』『崖っぷちの女たち』)、フランソワ・クリュゼ(『最強のふたり』『再会の夏』『唇と閉ざせ』)、シャンタル・ヌービル他 |
公開日、上映劇場 | 2023年5月5日(金・祝)~シネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、アップリンク京都、シネ・リーブル神戸ほか全国ロードショー |
第一線から降りた料理人が、
移民の少年たちと築いた熱いチームワーク
これはグルメ大国・フランスから届いた、美味しくておかしくて、じんとくるお話。ヒロインのカティ(オドレイ・ラミー)は、テレビ番組にも出演する人気シェフが営む有名レストランでスーシェフ(副料理長)として働いていた。いつか自分の店を開きたいという夢を抱いていたが、プライドの高い彼女は、シェフのやり方が気に入らずに大喧嘩して店を辞めてしまう。そして見つけた次なる職場は、本人も予想外だったが、未成年の移民たちが暮らす自立支援施設だった。
キッチンはあるものの、料理のプロであるカティの目から見れば、必要な器具も食材も揃っておらず、少年たちは「おなかさえふくれればいい」と思っていたから、腕の見せどころがない。カティのストレスを感じ取った施設長ロレンゾ(フランソワ・クリュゼ)は、少年たちを調理アシスタントにしてはどうかと提案。映画は、ここから大きく動き出し、俄然面白くなっていく(ちなみに、この施設長役のフランソワ・クリュゼは『最強のふたり』に出ていた人でした)。
(©Stephanie Branchu)
移民という存在を身近に感じることのない日本。この映画で驚いたことがあった。フランスの国家的事情によることなのかどうなのか詳しいことはわからないが、18歳までに就学できないと、強制送還させられるということ。そのため、年齢を偽っているのではないかという疑いがある者は骨年齢を測定させられるということ(映画の中でも、一人が骨年齢でひっかかった)。移民を取り巻くさまざまな問題をバックボーンとしながら、カティと少年たちの不器用な交流に力点が置かれている。フランス語もまだまだ理解できない少年たちが、カティに連れられて畑に出て行ったり、調理やマナーを教えてもらったりするうちに、どんどんと目が輝きだす。一方、知られざるカティの生い立ちが明らかになるとともに、人づきあいが下手でイライラしやすく傲慢さも見られた彼女にも変化が訪れる。表情が柔らかくなっていくのだ。
一流レストランのシェフともめた時、「あなたの代わりは掃いて捨てるほどいる」とカティは言われた。社会や企業とはそういうもので、優秀な人間が一人や二人抜けても何とか回っていく。でも、カティはそう言われた悔しさを胸に刻みながら、代わりのきかない存在になっていく。そこが凄いし、観る者の心を大きく揺さぶるのだ。この映画は、実在のシェフが、未成年の移民たちを調理師として育て、安定した生活を送ってもらうよう力を注いだという移民支援プロジェクトがもとになっている。くすりと笑ったり、切ない気持ちになったりしながら、キッチンを舞台にしたカティと彼らの奮闘に、いつの間にかエールを送っていた。
(宮田 彩未)
公式サイト:https://ouichef-movie.com/
配給:アルバトロス・フィルム
コピーライト:main(©Marcel Hartman)
sub01(©Stephanie Branchu)