原題 | 原題 Empire Of Light 2022年 イギリス・アメリカ 1時間55分 |
---|---|
監督 | 監督・脚本・製作:サム・メンデス(『アメリカン・ビューティ』『007/スカイフォール』『007/スペクター』) |
出演 | オリヴィア・コールマン、マイケル・ウォード、ターニャ・ムーディ、ハンナ・オンスロー、トム・ブルック、クリスタル・クラーク、トビー・ジョーンズ、コリン・ファース他 |
公開日、上映劇場 | 2023年2月23日(木・祝)~TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、イオンシネマシアタス心斎橋、MOVIX京都、京都シネマ、OSシネマズミント神戸ほか全国ロードショー |
~映画への愛をこめて、心と心が結ばれる素敵を描く~
2023年が明けてすぐこれを観て、ああ、もういっぺん映画館の大きなスクリーンでじっくり観たいと思った。すばらしい!心に染み入ってくる。観た後にじわじわ来る、染みる、浸される、何度も反すうする…そういう映画。
冒頭、レトロな建物に目が釘付けになった。やがて、それが映画館「エンパイア劇場」であり、無人のその映画館の扉を開けていく女性が、主人公のヒラリー(オリヴィア・コールマン)で、彼女はそこで働いていることがわかる。同僚も出勤してきて、エンパイア劇場のマネージャーであるヒラリーはどうも問題を抱えているらしいことが、彼らとのやりとりで何となくわかってくる。巧い語り口だ。
ある日、映画館に新しい仲間が加わる。人懐っこい黒人青年スティーヴン(マイケル・ウォード)だ。大学で建築を学ぶという夢に破れ、ここで働くことになった彼だが、持ち前の明るさと旺盛な好奇心で、すぐに周囲に溶け込んでいく。最も親しくなったのがヒラリーだ。辛い過去のトラウマにより感情を制御できなくなることがあるヒラリーを、スティーヴンは理解しようと寄り添い、優しい気持ちをさし出す。スティーヴンの存在があればこそ、劇場支配人エリス(コリン・ファース)のセクハラにも我慢するヒラリーだったが、とんでもない出来事が…。
舞台は1980年のイギリス、海辺の町。サム・メンデス監督が青春まっただ中という時代に影響を受けた音楽や映画が散りばめられている。本作は、新型コロナによるロックダウンで「映画はなくなってしまうのではないか」とメンデス監督が危惧したところから生まれたと聞く。だから、映画と映画館への愛情がたっぷり!雰囲気のあるすてきな映画館「エンパイア劇場」は、ロケ地となったイギリス・ケント州のマーゲイトにある「Dreamland」(元映画館とダンスホール)を、マーク・ティルデスリー率いる美術スタッフが大幅に改修したもの。アールデコ様式の美しさに、時代の荒波を受ける映画の哀愁が重なって、心をとらえる。映写技師ノーマン(トビー・ジョーンズ)の所作や、ヒラリーが初めて観客席に座って映画を観るシーンにもぐっとくる。映画愛のエッセンスがぎゅっと詰まっているのだ。
また、1980年代イギリスの社会的・政治的状況もしっかり組み込まれている。世代も人種も育った環境も違うヒラリーとスティーヴンが、社会的に疎外されているゆえに心の距離を縮め、励まし合い、愛し合う。これは当然のことなのだと思う。最後のほうに出てくる「人生とは心のありかだ」という言葉に打たれ、二人の最後のハグに涙がこぼれ、爽やかで前向きなラストシーンに浸った。オリヴィア・コールマン×マイケル・ウォードの相乗効果にシビレまくる秀作だ。
(宮田 彩未)
公式サイト:https://www.searchlightpictures.jp/movies/empireoflight
配給:ディズニー
©2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.