原題 | 英題:CATS’ APARTMENT |
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制作年・国 | 2020年 韓国 |
上映時間 | 1時間28分 |
監督 | 監督:チョン・ジェウン 音楽:チャン・ヨンギュ『哭声/コクソン』 撮影:チャン・ウーイング/チョン・ジェウン 編集:キム・キョンジン |
出演 | 遁村(トゥンチョン)団地に暮らす猫たち キム・ポド/イ・インギュ |
公開日、上映劇場 | 2023年1 月13 日(金)~シネ・リーブル梅田、アップリンク京都、2月18日(土)~元町映画館 他全国順次公開 |
猫たちを通して見えてくる この社会の変化と私たちのこれから
ソウル。再開発により取り壊される巨大団地、そこに地域猫として暮らしている猫たち250匹の運命はどうなるのか?『猫たちのアパートメント』は、そんな猫たちの姿を捉え、彼らの行く末を心配する人間たちが、どのような行動を起こしたかを描いたドキュメンタリーだ。監督は『子猫をお願い』で知られるチョン・ジェウン。彼女は、ソウルのトゥンチョン団地で2017年5月から2019年11月まで2年半、80回も現地を訪れ撮影した。その後、編集に半年かけ、9時間版を完成、さらに今回の88分バージョンに編集したと言う。
この映画が作られるきっかけになった「アンニョン!トゥンチョン団地プロジェクト」の中心メンバー、作家のイ・インギュさんはじめ、さまざまな人々(ほとんど女性)が、「トゥンチョン団地猫の幸せ移住計画クラブ(略称〈トゥンチョン猫の会〉)」を作り、猫たちを救うための作戦を練る。その過程が素晴らしい。
イラストレーターは、猫たちを識別するイラストを描きパンフレットを作る。餌場を作って少しずつ猫を移動させる。もちろん、捕獲してTNR(Trap-Neter-Return)=不妊・去勢手術=をしていく。保護してなつかせ、飼い主を探す。などなど、安全に暮らせる場所の確保に奔走する。
たとえば、温水パイプが通っている団地の地下は猫たちにとって冬を暖かす過ごすかっこうの場所なので、ここをねぐらにしている猫たちは多い。こういうところにもぐっている時、地上の建物が取り壊されたらどうなるか。
映画はクレーンを使って解体される建物とそのあたりを歩き回る猫たちを並行して映し出し、時間の経過による団地の姿の変貌を見せる。団地の〈死〉。人間は自然を開発し、そこに住む生き物を排除しながら、あるいは共生しながら、自然を変容させてきた。
地球環境の破壊により、生態系が狂わされ、生きづらくなった自然界で、人間もまた生きづらくなっているのではないか。そんな時、野良猫たちは人間のこころを和らげる存在として登場したのだ。
〈猫ママ〉と呼ばれ、野良猫たちに餌を与える人々がいた。そのためトゥンチョン団地の猫たちは地域猫として、栄養状態もよく、まるまる太り、毛並みも美しい。〈猫ママ〉たちがいなくなれば、猫たちは自力で生きていけるのか。
この映画に結論はない。ただ、猫たちと交流する人間たちを見つめ、あなたはどのようなかかわりをするか、問いかけられる。それはたとえば、国境を越えて移住する人々や、戦争などによって住むところを奪われ難民とならざるを得ない人々と、わたしたちはどう向き合うのかという問題と通底するのではないか。
コンスン、トゥンイ、カミ、パンダル、イェニャン、ノレンイなどと名付けられた個性的な猫たちを見るだけでも猫好きはウルウルしてしまう作品だが、深いテーマを内包している作品だと思う。
(夏目 こしゅか)
公式サイト: http://www.pan-dora.co.jp/catsapartment/
配給:パンドラ
提供:パンドラ/竹書房/キノ・キネマ/スリーピン
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