原題 | 英題 Last Film Show |
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制作年・国 | 2021年 インド・フランス |
上映時間 | 1時間52分 |
監督 | パン・ナリン |
出演 | バヴィン・ラバリ、バヴェーシュ・シュリマリ、リチャー・ミーナー、ディペン・ラヴァル他 |
公開日、上映劇場 | 2023年1月20日(金)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、kino cinema神戸国際ほか全国ロードショー |
映画愛と名匠へのリスペクトに満ちた
インド版“ニュー・シネマ・パラダイス”
映画とは光である。隠喩でなく、まさに光そのものなんだなあと、この映画を観て改めて思う。リュミエール兄弟から始まって現代に至るまで、いったい何本の映画作品が作られてきただろう。戦争などによるフィルム焼失を考えると、100万本は下らないそうで、200万本に近いだろうとある方が推定している。そのどれもが光を追いかけ、光と格闘し、光との調和を追求した。そして、その努力は銀幕で映像となって人々の心をつかみ取る。
そしてこの作品。いやもう、ありきたりな表現ではあるけれど、インド版“ニュー・シネマ・パラダイス”と位置付けられて当然の内容だ。ほとんどパクリのような設定やシーンもあるが、一貫して流れる映画愛ゆえに、そんなことどうでもいいように思えてきて、最後はじんじんと胸を焦がされる。主人公役の少年がこれまた達者で、目をくぎ付けにしてしまうのだ。あの「ニュー・シネマ・パラダイス」のきらきらした瞳を持ったトトのように。
サマイ(バヴィン・ラバリ)は、両親や妹とともにインドの田舎町で暮らす9歳の少年。学校に通いながら、父親が営むチャイの店を手伝っていた。ある日、彼の人生を大きく変えるものと出会う。映画だ。家族といっしょに初めて映画館ギャラクシー座を訪れたサマイは、背後からスクリーンに向けて放たれる光の線に衝撃を受ける。初めての映画館、初めての映画体験は、少年にワクワクするような未知の世界を垣間見せてくれた。映画というものを知ったサマイは学校をサボってギャラクシー座の映写室に入り込むようになり、映写技師のファザル(バヴェーシュ・シュリマリ)と親しくなっていくのだが…。
監督・脚本のパン・ナリンの実体験をもとに映画化されたもので、日本初公開のグジャラート語作品。“ほぼ実話”という表現もどこかで見たので、少しはフィクションも加えられているようだが、少年時の夢をかなえる人はこんなふうに情熱の火を大切に燃やし続けるのだろうな、としみじみ思う。何かと出会ってもそれをモノにできない、結局あきらめて違う道を歩む人が大半であることを考えると、才能やチャンスのほかに、揺るぎない熱意が必要なのだ。
また、インドでは社会的な上級クラスに進むには英語を話せることが絶対条件だという現実や、経済格差の実態も背後に見え隠れしている。驚いたのは、フィルムからデジタルへの転換によって、回収されたフィルムが意外なものにリサイクルされていること。さらに、目を引かれたのは、サマイの母親の手料理だ。日本のインド料理店ではあまり見かけないような、もっと素朴な感じなのだが、スパイスたっぷりでなんとも美味しそう。インド映画好きにはたまらないようなポリウッド映画が多数登場するし、ラストでは、キスシーンだけをつないだイタリアの「ニュー・シネマ・パラダイス」とは違う形で、映画への愛をあふれさせている。
(宮田 彩未)
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