原題 | Gli anni piu belli |
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制作年・国 | 2020年 イタリア |
上映時間 | 2時間15分 |
監督 | ガブリエレ・ムッチーノ |
出演 | ピエルフランチェスコ・ファビーノ、ミカエラ・ラマツォッティ、キム・ロッシ・スチュアート、クラウディオ・サンタマリア他 |
公開日、上映劇場 | 2022年12月30日(金)~TOHOシネマズ梅田。TOHOシネマズなんば、京都シネマ、シネ・リーブル神戸ほか全国ロードショー |
~40年もの歳月と幾つものトラブルで試された愛と友情の行方~
「初恋の人と結ばれる」ケースはそれほど多くはないだろうが、そのうち大抵は恋に落ちておつきあいしてそのまま十代か二十代で結婚…となるのではないかと勝手に想像している。年を重ねれば重ねるほど世界は広くなり、知り合いになる人も多くなっていくから選択肢が増え、初恋の相手だけにこだわり続けるというのは稀だろうと、これまた勝手に連想している。だから、この映画の登場人物の一人、パオロは驚異だ。
1982年、イタリアのローマ。16歳のパオロは、同級生で“宝石”という意味の名を持つジェンマと恋に落ちる。パオロは親友のジュリオやリッカルドと共に、青春期ならではのやんちゃな遊びをしていたが、そこにジェンマも加わるようになった。ところが、ジェンマの母親が亡くなったため、彼女はナポリの伯母の家に引き取られ、会うこともなく時は過ぎていった。1989年、パオロ(キム・ロッシ・スチュアート)は教師、ジュリオ(ピエルフランチェスコ・ファビーノ)は弁護士、リッカルド(クラウディオ・サンタマリア)は俳優の道を歩みだした青年に成長していた。そして、パオロは思いがけなくも、すっかり様子の変わってしまったジェンマ(ミカエラ・ラマツォッティ)とローマで再会する。
一人の女と三人の男。男たちから熱い視線を浴びるジェンマが主人公かというとそうではない。映画の冒頭シーンに意味ありげな表情で登場するジュリオが主人公のように見えたが、お話の展開から言うと、これまた違う。真の主人公はやっぱりパオロである。けっこう生真面目でどう逆立ちしても悪人にはなれないキャラクターで、遠い初恋の相手だったジェンマに執着し続けている。リッカルドも色合いは違うがぶきっちょで、最も世渡り上手なのはジュリオだ。
ジェンマはといえば、蓮っ葉な感じは否めず、なぜパオロがそんなに思いを寄せ続けているのか理解できない。でも、他人には理解できない恋があり、人生がある。ガブリエレ・ムッチーノ監督は「3人の男のどれにもすこしずつ自分がいる」というようなことを語ったそうだが、観ているうちにこの3人はそれぞれ、ひとりの男の分身なのかもしれないなと感じていた。
40年にわたる大河ドラマは、イタリアの政情やニューヨークのツインタワーを襲ったテロ事件などを背景に、恋の浮き沈みや仲間の裏切り、仕事での成功や失意など、4人の主要人物が味わった悲喜こもごもの歴史を見せてくれる。そして、昔の友人に会えばすぐに“あの頃”にタイムスリップするという、誰もが経験するような“同級生感覚”で映画の最後が締めくくられる。
イタリアに夢中だった90年代に、クラウディオ・バリオーニという歌手を知り、CDを買い求めてよく聴いていたが、彼独特のハスキーな歌声がエンディングに流れて嬉しかった。いわば、ポップなテイストを加えたカンツォーネというところだが、ドラマティックなこの映画をより鮮やかに印象づけている。
(宮田 彩未)
公式サイト:https://gaga.ne.jp/thebestyears/
配給:ギャガ
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