制作年・国 | 2022年 日本 |
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上映時間 | 1時間44分 |
監督 | 玉田真也 |
出演 | 三浦透子、前田敦子、伊藤万理華、伊島空、前原滉、前原瑞樹、浅野千鶴、北村匠海 (友情出演)、 田島令子、坂井真紀、三宅弘城 |
公開日、上映劇場 | 2022年12月23日(金)~シネ・リーブル梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX堺、アップリンク京都、kino cinema神戸国際 ほか |
〜それぞれの違いを認め合い、等身大で生きること。〜
アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』(2021年/濱口竜介監督)で、寡黙な運転手を演じ、観客の心を釘付けにした三浦透子の待望の主演作。心の奥底に、自分だけの大切な引き出しをたくさん持っているような、魅力的な女性、蘇畑佳純を好演。砂浜に座って、ぼんやりと海を眺めているだけで絵になり、ずっと応援したくなる。
冒頭、合コンのシーンから始まる。お洒落なレストランに男女4人。一見楽しそうに見える中で、どこかなじめずにいるのが、佳純である。家に帰れば、30歳を越えたからと、やたら見合い話ばかり薦める母と、妊娠中でおしゃべりな妹がいて、軽く受け流して自室に引きこもる。チェリストになる夢を諦めて、故郷に帰り、家族や職場の中で孤立しているわけではないが、周囲との違和感を抱き、自分を理解してもらえるか不安を抱いていることが伝わってくる。他者に恋愛感情を抱かず、性的に他者に惹かれない人のことをアロマンティック・アセクシュアルと呼ぶそうだが、佳純もまた、恋愛をしたことがなく、恋愛に興味もないことが、物語の展開とともに、徐々にわかってくる脚本が上手く、共感を呼ぶ。
お見合い相手もまた、仕事に忙しくて恋愛に興味がないと言い放つ店長だったり、久しぶりに再会し、保育所の仕事を紹介してくれた同級生はゲイだと告白したり、個性的な人物が次々と現れる。強烈な印象を残すのが、前田敦子演じる世永真帆。佳純の中学の同級生で、AV女優をしていたが、故郷に帰ってきて、再会する。繊細さを感じさせながらも、思い切りのよい性格で、思ったことははっきり口にする、さばさばした性格。彼女が登場してから、よりコミカルにダイナミックに展開していく。誰もが知っているシンデレラの物語を、佳純と二人で改変してつくった紙芝居は、大胆で興味深い。
映画の最後で、保育所の後輩からかけられた言葉に、佳純が勇気づけられ、喜びいっぱいに思わず駆け出していく姿のすがすがしいこと。それぞれの違いを認め合いながら、自分らしく精一杯生きていくことの尊さをあらためて教えられた。
(伊藤 久美子)
公式サイト:https://notheroinemovies.com/sobakasu/
配給:ラビットハウス
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