原題 | Happy New Year |
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制作年・国 | 2022年 韓国 |
上映時間 | 2時間18分 |
監督 | クァク・ジェヨン『猟奇的な彼女』 |
出演 | ハン・ジミン、キム・ヨングァン、コ・ソンヒ、イ・ドンウク、ウォン・ジナ、カン・ハヌル、イム・ユナ、イ・ヘヨン、チョン・ジニョン、ソ・ガンジュン、イ・ グァンス、チョ・ジュニョン、ウォン・ジアン、イ・ジヌク他 |
公開日、上映劇場 | 2022年12月9日(金)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、 MOVIX京都、kino cinema神戸国際 他全国ロードショー |
~みんなで観られる大人の胸キュン群像劇~
クリスマスで群像劇と言ったらハリウッドスター大集合の「ラブアクチュアリー」(2003)を思い出しますが、こちらも韓国ドラマファンなら一度は見たことのある顔ぶれが勢ぞろい。
クリスマスシーズン真っ只中の高級ホテル〈エムロス〉では誰もが華やかに装い笑いさざめき合っていたが、その裏では様々なドラマが繰り広げられていた。ホテルマネージャー(ハン・ジミン)には長年密かに思いを寄せていた男友達がいた。占い師から近々告白を受けると言われ期待に胸膨らませていたら、あろうことか突然の結婚報告!出会ったばかりの若い恋人と大晦日に式を挙げるというのだ。一方、スイートルームにはこのホテルのCEO(イ・ドンウク)が長期滞在していたがその裏では買収話が進んでいた。
また、エントランスでは退職間際のドアマン(チョン・ジニョン)が昔の恋人と再会し旧交を温めていた、かと思えば喫茶室には連戦連敗の土曜日のお見合い男がいて・・・極めつけは公務員試験に失敗して恋人に愛想をつかされた男(カン・ハヌル)が“ホカンス”を楽しんだあと大晦日に屋上から飛び降りようと計画していたのだった。それを知ったスタッフらは自殺を思いとどまらせようと次から次へと奇想天外な作戦を繰り出す。年末には人気シンガー(ソ・ガンジュン)のコンサートも予定されている。さあ、ニューイヤーまでのカウントダウンは始まった、彼らの運命やいかに・・・!
思えばこういう王道のラブストーリー、それこそ20年前にはハリウッドで量産されていた気がしますが、久々に観ると新鮮です。最近ではそれを逆手にとってラブコメあるあるをツッコミまくった「ロマンティックじゃない」(2019)のようなセルフパロディも出てきましたが、本作は大真面目にラブコメしています。韓国映画と言えば最近は社会風刺やノワールのイメージが強めですがラブストーリーとも相性が良いのです。何故なら外見は日本人とよく似ているけれど中身はけっこうラテン系。歯の浮くようなセリフもさらりと決めてきます。
加えてコメディ部分も三谷作品を彷彿させるテンポの良さで畳みかけてきます。実際「THE有頂天ホテル」なども参考にされたそう。カン・ハヌルとモーニングコールの掛け合いシーンは絶妙です。監督は爆発的ヒットをとばした「猟奇的な彼女」のクァク・ジェヨン。群像劇は初めてとのことですが、とくに監督の思いが込められているのがドアマンと昔の恋人のペア。監督と同年代というだけでなく、壮年から熟年にかけての恋愛を描いた日本のマンガ「黄昏流星群」(弘兼憲史原作)のような世界観をこのパートに託したそうです。日本でもなじみのあるエッセンスが込められている点でも親しみやすい作品になっています。
最近は映倫の指定も細かくなって、初めてのデートや家族で観るとき作品選びに迷うこともあるかと思いますが、その点でも安心して観られてお薦め。もちろん一人でもほっこり楽しめます。ちなみに〈EMROSS〉の意味はEmotion, Romantic, Sensitive/Slapsticsだそうで、すなわち胸キュンラブコメ! 作中に登場するアートや楽曲など細部にも、おっ!と思う仕掛けがたくさん。だけど伏線回収とか難しいことは考えなくてOK!個人的にはバラード曲のアレンジにグッときました。年末の慌ただしいなか疲れた頭をほぐしてくれる、ちょうどいいリフレッシュムービーの登場です。
(山口 順子)
公式サイト:https://gaga.ne.jp/happynewyear/
配給:ギャガ
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