ディオールのドレスに魅せられて、パリへ！

悲しみをのり越えて見つけた、なりたかった本当の自分。

明るく優しいお人好しのミセス・ハリスがもたらすハッピー・オーラは、観る者にも勇気を与えてくれるようだ。

第二次世界大戦の傷跡がまだ残る1950年代初頭のロンドンとパリ、戦争から帰らぬ夫を待ち続けたミセス・ハリスが巻き起こす奇跡のハッピー・オーラは、“縁の下の力持ち”のような存在の人々に光を当て、勇気をもたらしてくれる。そんな微笑ましいミセス・ハリスを、あの『ファントム・スレッド』や『家族の庭』『秘密と嘘』など、どちらというとクールな役柄が多かったレスリー・マンヴィルが今までにない明るくキュートな表情で魅了する。

それに、何と言ってもパリのクリスチャン・ディオールのサロンで生み出される華やかなドレスたち！当時の貴重なコレクションを基にデザインされた衣装も、ミセス・ハリスの冒険を華やかに彩っている。いくつになっても、“なりたい自分”に挑戦することは生きる原動力になる。今からでも変われるかもしれない、そんな勇気をくれる華やかなポジティブ・ムービー♪

ロンドンで家政婦をしながら戦争から帰らぬ夫を待ち続けるエイダ・ハリス（レスリー・マンヴィル）は、親友のパメラ（ローズ・ウィリアムズ）と仕事帰りのパブで、賭け屋のアーチー（ジェイソン・アイザック）をからかったり、お喋りをしたりして日々を過ごしていた。ある日、雇い主のクローゼットで見つけた豪華なドレスに心を奪われる。それはＣ・ディオールの500ポンド（当時のレートで換算して250～400万円？）もするとても高価なものだった。

いつも雇い主のために一所懸命に働き、頼まれ事にも嫌な顔せずに快く引き受けていたエイダ。それでもぞんざいに扱われることに「私は透明人間ではない！」と心の中でわびしさを抱えていた。そんなエイダの元に、夫の戦死の報せが届く。悲しみに打ちのめされたエイダを心配するパメラやアーチー……絶望のエイダに一筋の光がもたらされ、あれよあれよという間に幸運の連鎖が起こる！夫への愛のご利益か、神の思し召しか、エイダは目覚める！なりたかった自分になるために、「よし、パリへ行こう！」。

戦禍のせいか、市民運動の盛んなストライキのせいか、ロンドンより汚いパリの街に呆然とするエイダ。だが、モンテーニュ通りの一角にあるC・ディオールのサロンの辺りは華やかな雰囲気に満ち溢れていた。お金を持って行けばドレスが買えると思っていたが、門前払いに遭う。 「何しに来たの？」的に冷たくエイダを追い払おうとするマネージャーのコルベールを、フランスの名優イザベル・ユペールが好演。ハイソな客しか相手にしない高慢チキなパリジェンヌがよく似合う(笑)。そこに登場したのが、親切なサシャーニュ侯爵（ランベール・ウィルソン）！ハンサムなジェントルマン♡恋のときめきか～!?

ファッション・ショーで繰り広げられる豪華ドレスの数々！オートクチュールのシステムを知らなかったエイダをコルベール以外のスタッフが優しくフォローしてくれる。「家政婦のエイダがドレスを買いに来てくれた！」と喜ぶモデルやお針子さんたち。「自分たちは透明人間ではない！もっとプロとして尊厳ある扱いをして欲しい」。そんな思いを共有するエイダは、ドレスが出来上がるまでの日々を、有能なのに本領発揮できない内向的な会計士のアンドレ（リュカ・ブラヴォー）や、学問の道を歩みたいと思っているモデルのナターシャ（アルバ・バチスタ）らと助け合いながら、ハッピー・オーラ全開で奇跡をもたらしていく～♪

いつもユーモアをもって人に優しく接し、素直な気持ちで人生を楽しみ、困っている人には奉仕するミセス・ハリス。そんなお人好しで明るい彼女だからこそ幸運も寄ってくるのだろう。あなたの周りに “ちょっとお話するだけで楽しくなれる人” っていますか？この映画を観て、自らもそんな存在の人になれるよう意識して生きていきたいと思えてくる。

（河田 真喜子）

公式サイト： https://www.universalpictures.jp/micro/mrsharris

配給：パルコ