制作年・国 | 2022年 日本 |
---|---|
上映時間 | 1時間25分 |
原作 | 平庫ワカ『マイ・ブロークン・マリコ』(BRIDGE COMICS/KADOKAWA 刊) |
監督 | 監督:タナダユキ 脚本:向井康介 タナダユキ 撮影:高木風太 音楽:加藤久貴 |
出演 | 永野芽郁、奈緒、窪田正孝、尾美としのり、吉田羊 |
公開日、上映劇場 | 2022年9月30日(金)~TOHOシネマズ(梅田、なんば、二条、西宮OS)ほか全国ロードショー |
親友の遺骨を胸に、捨て身のジャンプ!
過去を振り返りつつ、現在の自分を見直し、そして未来へと生きる
親友・マリコの自死に突き動かされ、とんでもない暴挙に出るシィちゃん。マリコの遺骨を抱いて突っ走るシィちゃんを、永野芽郁が思いっきり突き抜けたオトコマエな演技でイメチェン!マリコのことを「重い、うざい、めんどくせえ奴」と思いながらも付き合う優しさ、誰に対しても率直にもの言う正直さ、弱き人を体を張って守ろうとする逞しさ、媚びない、めげない、タフなシィちゃんが実にカッコイイのだ。平庫ワカのコミック『マイ・ブロークン・マリコ』にホれ込んで映画化したタナダユキ監督の、行き場がなく生き辛さを抱える人々に贈る痛快作!
厳しいノルマにパワハラと、”ザ・ブラック“な会社で働くシイノトモヨ(=シィちゃん・永野芽郁)は、親友・マリコ(奈緒)の自殺をTVのニュースで知って大ショック!マリコが幼い頃から父親のDVを受け続けていたのを知りながら、それを救ってあげられなかった。大人になってからも彼氏たちからDVを受けていたマリコは、すでに理性など通じない状態になっていたのだ。「シィちゃんが本気で怒ってくれるのが嬉しい」と頼りにされ、「マリコを支えなきゃ!」という一途な想いのシィちゃんだったが、マリコが手紙一つ残さず突然いなくなってしまったことでパニックに陥ってしまう。
マリコとの思い出が急にあふれてきて、「今度こそ私が!」とマリコの遺骨を”クソ親父“から奪取して逃走するという暴挙に出る。ここからは目が覚めるようなシーンの連続である。シィちゃんは、遺骨を胸に、それまでマリコが受けた数々の虐待をぶちまけて、ベランダからジャンプ!裸足で川を渡るシーンのなんと勇ましいこと!そして、「どこへ行きたかったの?」とマリコの遺骨に静かに問い掛けながら、一緒に行きたかった岬を目指す。道中、執拗な”クソ上司“からの連絡もガン無視!また、助けてくれた男(窪田正孝)とのやり取りや、過去を振り返りながら今の自分の弱さに気付いていく。「なんで一緒に死のうって言ってくれなかったの?」……。
シィちゃんは、ブラックな会社にしか行き場がないのか、そこで受けるパワハラに“耐え忍ぶ”というよりマイペースを貫いている様子。何を言われてもガン無視のタフさ、女性をウリにしない媚びない姿勢、虚栄を張らない正直さ。そんなシィちゃんだったが、旅を通じて自分もマリコに支えられていたことに気付いていく。そして、マリコのいない世界でも生きて行こうと決意させるラストに大いに救われる。
“親友の死“という暗く重い始まりながら、じわじわと勇気付けられる痛快作も珍しい。これも「シィちゃん」という自分の弱さを認識しながらもめげずに生きようとするタフなキャラクターのお陰だと思う。「風呂入って、ちゃんとご飯食べて寝なきゃ、人間ロクなことしか考えられなくなる」とか「思い出の中の人と、あなた自身を大事にして下さい」など、謎の男に掛けられる言葉が妙に心に刺さる。
「生きてさえいれば、何とかなる!」、若くしてギブアップするには勿体ない!これからは、ブラックだろうがホワイトだろうが、周囲に飲み込まれて流されることもなく、誰かに何かに依存し過ぎることなく、臨機応変に立ち回れる術を身に付け、半ばサバイバルモードで生き抜くタフさが必要なのかもしれない。それを楽しみながら生きられたら最高なんだけどね。
(河田 真喜子)
公式サイト:https://happinet-phantom.com/mariko
配給:ハピネットファントム・スタジオ/KADOKAWA
© 2022 映画『マイ・ブロークン・マリコ』製作委員会
ファンタジア国際映画祭 最優秀脚本賞受賞