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『プリンセス・ダイアナ』

 
       

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作品データ
原題 The Princess  
制作年・国 2022年 イギリス
上映時間 1時間49分
監督 監督:エド・パーキンズ 製作:サイモン・チン ジョナサン・チン  編集:ジンクス・ゴッドフリー(アメリカ映画編集者協会会員) ダニエル・ラピラ 音楽:マーティン・フィップス 日本語字幕:佐藤恵子/字幕監修:多賀幹子
出演 ダイアナ妃(元妃・故) チャールズ皇太子(現国王) エリザベス女王(故) カミラ・パーカー=ボウルズ(現王妃) フィリップ王配(故) アン王女 ウィリアム王子(現王太子) ヘンリー王子  クィーン・マザー(故)
公開日、上映劇場 2022年9月30日(金)~大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、京都シネマ、シネ・リーブル神戸、TOHOシネマズ西宮OS 他全国ロードショー

 

エリザベス女王の最大の脅威となった“悲劇のダイアナ”

英国王室を変えたダイアナの影響力とは――?

 

1997年9月6日、衝撃的なニュースが世界中を駆け巡った。ダイアナ元妃の事故死である。しかも、パパラッチに追われたあげくに起こした自動車事故とあって、あの美しいダイアナの若すぎる死に誰もが悲しみに打ちのめされた――。


PD-pos.jpg世界中が熱狂したダイアナフィーバー。豊かなブロンドの髪に長い手足の彼女が着こなす“ダイアナ・ファッション”は憧れの的だった。何と言ってもあの吸い込まれそうな青い瞳ではにかんだようなシャイな表情を見せられたら誰もが魅了されてしまう。チャールズ皇太子のお妃候補になってからというもの、多くのパパラッチに追い回され、世紀の華麗なる結婚式は世界中にTV中継され、どこにいても、誰よりも光り輝いていた。世界中の人々に愛され、亡き後も伝説化されているような熱狂ぶり。本作は、そんなダイアナを“悲劇のプリンセス”に仕立てた報道の在り方を含めて、ダイアナの影響力をアーカイブ映像で綴ったドキュメンタリー映画である。


19歳でチャールズ皇太子のお妃候補となったダイアナは、20歳で32歳のチャールズと結婚。翌年にはウィリアム王子を出産し順風満帆のように思われていた。ところが、次第に夫婦関係はぎくしゃくし、次男のヘンリーが生まれた頃には冷めきっていたとさえ言われた。その原因は、チャールズの浮気。相手はチャールズの初恋の人とも言われる3歳年上のカミラ・パーカー。女王と王配に反対され、カミラも諦めて他の人と結婚してしまうものの、チャールズはずっと想い続けていたのだ。若くて健康的で美しいスペンサー家のダイアナに国民はアイドル以上に熱狂したが、チャールズにとっては不本意な結婚だったのかも知れない。


PD-240-1.jpgチャールズが不倫などせずにダイアナとの家庭を大事にしていたら、ダイアナも死なずに済んだのに!とか、あんな美しい妻がいるのに、なぜ?と誰もが不思議に思うことだろう。新婚当初のインタビュー映像から、チャールズに甘える初々しく可愛らしいダイアナの姿がある。あれが束の間の幸せだったのか、その後あの美しい顔に陰りを見せ始める。こだわりの強いチャールズにとって趣味も違う若過ぎるダイアナとはソリが合わなかったのか。いくら若くて美しくても、精神的に成熟した女性の知性や包容力には敵わなかったのだろうか……。新国王となった今のチャールズ三世とカミラ王妃を見れば、抜群の安定感で国王を支える存在の大きさに驚かされる。控えめで気取らず、ジョークで周囲を和ませるカミラ夫人の人柄がエリザベス女王にも許容されていったのだろう。

 


PD-240-2.jpg二人の王子と一緒にいるダイアナはとても幸せそうだが、公務でチャールズと一緒だと寂しそうな表情でうつむき加減になってしまう。世界中どこへ行ってもダイアナフィーバーは巻き起こり、人々が求めているのは自分ではなくダイアナだと、チャールズにとっては面白くない状況が続く。ダイアナも自分の美しさがパワーとなることを自覚し、王室の堅苦しさから逃げるように多くのボランティア活動に情熱を注いでいく。今までの王族にはない国民に寄り添うダイアナに、聖母のようなイメージを抱く人々も多かったことだろう。そして、運命のTVインタビュー。チャールズの裏切りによる不毛の結婚生活や、自分の不倫まで赤裸々に告白してしまい、女王の勘気に触れ、離婚勧告を受けることとなる。


PD-500-3.jpg多くのアーカイブ映像で綴るダイアナ元妃の半生は、ハイエナのような報道陣にいかに付きまとわれ常に見張られていたか、彼女の細かい表情を漏らさず捉えた映像からその異常さを窺い知ることができる。プライバシーなどお構いなしに盗聴・盗撮が行われ、それは離婚後もますます過剰になっていった。民衆もそんなダイアナのスキャンダラスな情報を求めていたのかも知れないが、パリでの事故死で世界中の人々の目が覚めることになる。


PD-500-2.jpg映画は、“シンデレラ”のハッピーエンドの続きを見るような始まり方をし、“悲劇のプリンセス”で終わる。その後、ダイアナの死を悼まない王室への批判が高まり、エリザベス女王が国民の怒りを鎮めるような特別スピーチを行った映像は含まれていない。女王も開かれた王室を目指してきたもののダイアナの国民に寄り添うまでには至らなかったことを反省し、ダイアナのボランティア活動を引き継ぐ形で王室の公務の在り方や姿勢をも新たにしていくことになる。栄光の治世70年を誇る故エリザベス女王に最大の危機をもたらしたダイアナ。国民の支持あってのロイヤルの在り様をまざまざと見せつけられたような気がした。それにしても、ウィリアム王太子はダイアナに似ている。特に、青い瞳のあの眼差しはそっくりだ。

 

(河田 真喜子)

配給:STAR CHANNEL MOVIES 

後援:ブリティッシュ・カウンシル 読売新聞社

©2022 DFD FILMS LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED. Photo credit: Kent Gavin Original Art by Nicola Green

公式サイト: https://diana-movie.com/

公式Twitter:@Dianafilm0930 #プリンセスダイアナ

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