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『犬も食わねどチャーリーは笑う』

 
       

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作品データ
制作年・国 2022年 日本 
上映時間 1時間57分
監督 監督・脚本:市井昌秀  音楽:安部勇磨 主題歌:never young beach 「こころのままに」(BAYON PRODUCTION)  撮影:伊集守忠
出演 香取慎吾 岸井ゆきの 井之脇 海 中田青渚 小篠恵奈 松岡依都美 田村健太郎 森下能幸 / 的場浩司 眞島秀和 徳永えり 峯村リエ 菊地亜美 有田あん 瑛蓮 / きたろう 浅田美代子 / 余 貴美子
公開日、上映劇場 2022年9月23日(金)~TOHOシネマズ(梅田、なんば、二条、西宮OS)、T・ジョイ京都、kino cinema 神戸国際 ほか全国ロードショー

 

夫婦円満の秘訣、教えます!

香取慎吾演じる鈍感夫になぜか共感!?

 

不満のない結婚生活などないと思うが、本作では夫への不満を妻がSNSで吐き出すことによって平穏を保っているという夫婦の物語。匿名だから大丈夫だと思ったのに……でもバレちゃった!夫の激怒ぶりは予想通りだが、妻も負けてはいない。夫婦喧嘩は犬も食わないと昔から言われるが、平穏を装った仮面夫婦でいるよりも、喧嘩してでも真剣に対峙してこそ本当の夫婦円満になれるのでは?と思えてくる。あまり生活感のない香取慎吾が飄々とした鈍感夫や優秀な販売員を嬉々として演じているのを観ているだけで楽しくなってくるラブコメディ。


inumokuwanedo-500-2.jpgホームセンターの副支配人として働く裕次郎(香取慎吾)は、商品説明が抜群に上手く、来店客は勿論スタッフへの対応も丁寧で頼りがいのある存在。そんな裕次郎の「つっぱり棒」の説明ぶりに魅了されたのが、客として訪れていた日和(岸井ゆきの)だった。だが、結婚4年経って裕次郎は趣味の筋トレに夢中で家事は妻任せ。一方、コールセンターで働く日和は、日々苦情の電話に応えながらも黙々と仕事と家事をこなしていた。二人には子供はいないが、チャーリーというペットのフクロウを飼っていた。


inumokuwanedo-500-1.jpgある日、スタッフのおばちゃん(余貴美子)から「旦那デスノート」なるサイトを教えられ、その中でも特に人気のある投稿者の存在を知る。夫への不満を過激にぶちまけるサイトなんてあったのか~!なんと、その中の人気ナンバーワンの投稿を読むと、今朝妻と交わした会話そのものだった。しかも、ハンドルネームは「チャーリー」!? 帰宅して妻に抗議するも、「SNSで吐き出さないとやってらんない!」と逆切れされる。しかも、「旦那デスノート」の出版話まで出ているという。それからというもの、日和は裕次郎に合わせた生活を止め、自分のペースで生きることに。そんな夫婦の危機を見て、結婚式を控えた若槻(井之脇海)は増々マリッジブルーとなり、はたして結婚式はどうなることやら……。


inumokuwanedo-500-5.jpg妻の気持ちも知らずマイペースな日々を楽しんでいた前半とは違って、結婚披露宴のシーンや妻の職場に走って乗り込むシーンなど、今まで見たことのない香取慎吾に出会うことができる。そして、最近出演作目白押しの岸井ゆきのが、秘めていた怒りを爆発させたり、夫と向き合えない虚しさを滲ませたりして、あの童顔で鈍感夫に“喝”を入れる。さらに、作品全体の行間を埋めるような存在感の余貴美子。彼女はどんな役にも化けられるが、あの声だけでもシーンが引き締まるようだ。ホームセンターやコールセンターという身近な職場が舞台になっているところも親近感があって面白い。


inumokuwanedo-500-3.jpgところで、「夫婦円満の秘訣は?」と、決して円満ではないのに訊かれることがある。そんな時はすかさず「忍耐です!」と夫婦して答えてしまう。本作を観て、「我慢するだけでいいのか?」と反省してしまった。気まずい思いをしたくないばかりについ我慢してしまうが、それでは問題は何も解決しない。結婚生活も長くなると、無関心や諦めや面倒くさいなどの理由で物事を建設的に考えられなくなる。大切な人をもっと大事に思うなら、逃げずに相手と向き合う勇気が必要だなと痛感した。

 

(河田 真喜子)

公式サイト:https://inu-charlie.jp/

配給:キノフィルムズ/木下グループ

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