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『ギャング・カルテット 世紀の怪盗アンサンブル』

 
       

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作品データ
原題 原題:Se upp för Jönssonligan 英題:THE JONSSON GANG 
制作年・国 2019年 スウェーデン 
上映時間 2時間2分
監督 監督・脚本:トーマス・アルフレッドソン(『ぼくのエリ 200歳の少女』『裏切りのサーカス』) 共同脚本: ヘンリック・ドーシン
出演 ヘンリック・ドーシン、ヘダ・スターンステット、ダーヴィド・スンディン、アンダース・ヨハンソン
公開日、上映劇場 2022年9月9日(金)~シネ・リーブル梅田、アップリンク京都、9月16日(金)~シネ・リーブル神戸 他全国順次公開

 

天才的な発想で緻密な計画の割にはどこか抜けている窃盗団、

北欧特有のゆるさに癒される痛快クライムコメディ!

 

『ぼくのエリ 200歳の少女』『裏切りのサーカス』のトーマス・アルフレッドソン監督最新作は、スリラーやサスペンスでもない、かなり毛色の違うコメディ!? 4人の窃盗団のメンバーは、已むに已まれぬ事情により至って真剣にお宝を盗み出そうとしているのだが、いつも何かが違ってくる。音楽の演奏時間に合わせて手順を踏むという緻密な計画の割にはアナログ的で人間味のあるキャラクターばかり。“骨折り損のくたびれ儲け”という訳でもないのだが、「信頼し合える仲間さえいれば幸せ!」とか「本当の幸せって案外身近にあるのかも?」と思わせてくれるような、癒し系クライムコメディなのだ。


gangquartet-500-3.jpg本作は、アルフレッドソン監督も子供の頃から大好きだったというスウェーデンの国民的人気コメディ映画シリーズ「イェンソン一味」の新バージョン。リーダーのシッカンはどんな金庫でも開けられる凄腕の金庫破り。ターゲットを決めるのもリサーチやプランニングとすべて一人で準備し、他の3人の役割分担も決めていく。その手口はというと、ラジオから流れる指定の楽曲に合わせて秒単位で遂行するという、実に巧妙で鮮やか!ところが、誰かがドジを踏んで、いつもシッカンだけが捕まって刑務所へ……。


gangquartet-500-1.jpg今度こそ!と思い付いたのがストックホルムにある北欧民族博物館に収蔵されている伝説のフィンランド王国の王冠!そこには「カレリアのハート」という王国誕生にまつわる伝説の宝石がはめ込まれている(はず?)。成功すれば億万長者だ!と意気揚々と仲間に計画を披露するが、堅気の道を歩きたいと思っている仲間たちはあまり乗り気ではない。気の強いドリスとのん気なハリィの夫婦は沢山の子供を養子にしており、広いアパートに引っ越したいと思っている。老いた両親と暮らしている心優しいラグナルは、ショボい父親の店を継ぐように言われていたが気が進まない。


gangquartet-500-6.jpg一方、王冠を巡って、スウェーデンの実業家のじいさん(クッラ・コーポレーション)が、フィンランド王国の王家の血を引く実業家を煽り立てて、フィンランドを君主制にしようと暗躍していた。ところが、王冠には「カレリアのハート」の宝石がない!? ある秘密組織がフィンランド王国の象徴である「カレリアのハート」だけを保管していたのだ。一人になったシッカンは、騙されて「カレリアのハート」を秘密組織から盗み出そうとするが……。


gangquartet-500-4.jpg天才肌のシッカンでも孤独には勝てず、決して裏切らない仲間とのプラン遂行時が一番充実したひと時。3人の仲間たちも同じ気持ちで、みんなで仕事できることが楽しくて仕方がないのだ。そんな彼らの幸せが伝わってきて、観ているこちらまで楽しい気分になれる。意外なエンディングが用意されていて、子供だけでなく大人にも大人気シリーズだったのも納得できる。危ない橋を渡っても、幸せは意外と身近にあるのかもしれないね。

 

(河田 真喜子)

公式サイト:https://movie.kinocinema.jp/works/thejonssongang

配給:キノフィルムズ

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