原題 | THE ALPINIST |
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制作年・国 | 2021年 アメリカ |
上映時間 | 1時間33分 |
監督 | 監督:ピーター・モーティマー、ニック・ローゼン 撮影:ジョン・グリフィス 制作:レッドブルメディアハウス |
出演 | マーク・アンドレ・ルクレール、ブレット・ハリントン、アレックス・オノルド(『フリーソロ』)、ラインホルド・メスナー、ミッシェル・カイパーズ 他 |
公開日、上映劇場 | 2022年7月8日(金)~大阪ステーションシティシネマ、京都シネマ、シネ・リーブル神戸、TOHOシネマズ西宮OS 他全国ロードショー |
山々に選ばれし天才アルピニスト、マーク・アンドレ・ルクレール
彗星のごとく現れ、25歳で伝説となった若者の
知られざる実像に迫るドキュメンタリー
急峻な絶壁を命綱なしで、たった一人で登っていく――それだけで身がすくみそうになる。一瞬にして滑落、死の危険も省みず黙々と登る。高い技術と身体力に気力と運の強さも必要となるだろう。最近ではその成果をSNSなどで随時公表しながらビジネスにつなげるケースも多い。ドキュメンタリー作品も多く作られ、2019年公開の『フリーソロ』(第91回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞)では、雄大な大自然に挑戦する人間の極致を見るようなフリークライミングの世界を世に知らしめた。
そんな中、カナダ出身の若者で前人未到の山々を単独で制覇し続けている天才クライマーがいるという噂が広まり、ドキュメンタリー映画監督のピーター・モーティマーとニック・ローゼンの興味を引く。だが、彼はSNSで発信することもなければ携帯すら持っておらず、リサーチもままならない。増々謎の若者に惹かれ、彼が住むカナダのスコーミッシュへ訪ねていくと、そこには清々しいほど純粋に登山を愛する無欲な若者の姿があった。
二人の監督がマーク・アンドレ・ルクレールに会った時、彼は23歳だった。カナダのブリティッシュ・コロンビア州出身のマークは、子供の頃ADHD(注意欠陥障害)と診断されていたが、祖父から贈られた本「Quest for Adventure」(クリス・ボニントン著)を読んで登山に興味を持ち、山に魅入られるようにアルピニストとしての才能を発揮していく。そして、優秀な女性クライマー、ブレット・ハリントンという良き理解者であり最愛の人と出会い、なんとテント暮らしをしながら登山の日々を送っていたというから驚きだ。
社会からの評価や功績など気にせず、ひたすら自分の楽しみのために山に登る。登頂不可能と言われるような山でも懐深く分け入って頂上を極める。その姿はまるで彼だけが山々に許されているような、選ばれし者の崇高さを体感できる。険しい山岳地帯での撮影は困難を極めたようで、さらに、クライミングに集中するため単独で行動してきたマークにとって撮影隊の同行はストレスとなったのか、突然消息を絶つ!
クライマー自身に取り付けられたカメラの映像や密着撮影の映像を観慣れている者としては、むしろ望遠で捉えたマークの登頂軌跡の映像が印象的だ。どんな気象状況の下、どんな山に登っているのか、天空と山岳が一体となった映像から、大自然の中で小さく小さくうごめくマークはまさしく山と対話する孤高の存在。まるで不可侵の聖域を見ているような不思議な感覚になってくる。
「彼のクライミングスタイルは本当に美しい。まるでバレエを見ているようだ」とベテランの撮影監督に言わせるほど、マークのクライミングスタイルは独特だったようだ。予想外のアクシデントに見舞われ公開も危ぶまれた本作は、再びマークの姿を捉えたアルゼンチンのパタゴニアでの貴重な映像に加え、他にもクライミング界の哲学者と呼ばれるラインホルド・メスナーや、『フリーソロ』のアレックス・オノルド、母親や恋人のブレットなどのインタビューも、マークがアルピニストとして天性の賜物であったことを物語っている。多くの人々に愛されていたマーク、山に抱かれるように伝説となった彼の魂に触れられる唯一のドキュメンタリー作品となった。
(河田 真喜子)
公式サイト:https://alpinist-movie.com
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配給会社:パルコ ユニバーサル映画
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