原題 | 原題Verdens verste menneske 英題The Worst Person In The World |
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制作年・国 | 2021年 ノルウェー、フランス、スウェーデン、デンマーク |
上映時間 | 2時間8分 |
監督 | ヨアキム・トリアー(『テルマ』(17)、『母の残像』(15)) |
出演 | レナーテ・レインスヴェ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ハーバート・ノードラム他 |
公開日、上映劇場 | 2022年7月1日(金)~シネ・リーブル梅田、イオンシネマシアタス心斎橋、アップリンク京都、シネ・リーブル神戸ほか全国ロードショー |
受賞歴 | 第74回(2021)カンヌ国際映画祭女優賞受賞 |
~全く異色のノルウェー版『ブリジット・ジョーンズの日記』~
タイトルからしてアピール度バツグン!でも、内容となると、そんなエグさはない。真実の恋への願望、2人の男性の間で揺れる心…となると、思い出すのは、レネー・ゼルウィガーを一躍人気スターにした『ブリジット・ジョーンズの日記』だ(2001年/シャロン・マグワイア監督)。しかしまあ、その色、その響き、その感触は全く違う(当然のことながら)。広範な共感を得やすいのは、ブリジット・ジョーンズのほうだろうが、こっちのヒロインの迷い、悩み、決断もなかなかに心に迫ってくる。
主人公のユリヤ(レナーテ・レインスヴェ)は、自分が何をしたいのか、何を本当に望んでいるのかを探し続けている。医学の道に入ろうと勉強していたのに、興味があるのは人の体でなく、人の心の方だと気づいて学校を辞めてしまったという過去がある。恋愛でも同じ。グラフィックノベル作家として成功したアクセル(アンデルシュ・ダニエルセン・リー)と知り合い、恋に落ち、一緒に暮らすようになったが、年が離れているアクセルの結婚と子ども願望にどこか違和感を覚えるユリヤ。そんなある日、招待されてもいないパーティーに忍び込んだユリヤは、アイヴィン(ハーバート・ノードラム)という青年と出会い…。
恋と仕事にまつわる、いわゆる“自分探し”のお話だが、ユリヤは自分自身に正直だと思う。「ちょっと、ちゃうやろ」と感じた時、見栄や諦めや相手への過度な気遣いなく、かなり大胆に、次の行動に出ることができる。もちろん、悩む。二股だから、「これはマズイ」と後ろめたく思う。悩んで、迷った結果、周囲から見れば不器用かもしれないけど、心の声に耳を傾けて、選択する。そういう姿が、共感を与えるヒロイン像となり、この映画を世界でヒットさせたのだろうと思う。
いちばん印象的なのは、ユリヤがアクセルのそばからアイヴィンの元へ駆けていくシーンだろう。周囲のすべてがストップモーション状態になり、ユリヤとアイヴィンだけが存在しているかのような。これは、恋に落ちた者なら経験したことがある、あの一瞬そのものだ。「周囲は消える、この世にはふたりだけ」という、あのとんでもない錯覚、それでいてとてつもなく甘美な感覚!
ユリヤを演じたレナーテ・レインスヴェは映画初主演の本作で、第74回カンヌ国際映画祭女優賞を獲得。第94回アカデミー賞では脚本賞と国際長編映画賞にノミネート、そのほか世界の映画祭で注目を浴びた。ちなみに、アクセル役のアンデルシュ・ダニエルセン・リーは、俳優でありながら医師のお仕事もしているという。ニューヨークほど騒々しくなく、どこかゆったり感のあるオスロの街の風情を背景に取り込んだヨアキム・トリアー監督のこの作品は、折に触れてまた観てみたくなるような特別の魅力を放っている。
(宮田 彩未)
公式サイト: https://gaga.ne.jp/worstperson/
配給:ギャガ
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