原題 | BROKER |
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制作年・国 | 2022年 韓国 |
上映時間 | 2時間10分 |
監督 | 監督・脚本・編集:是枝裕和 撮影監督:ホン・ギョンピョ |
出演 | ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、ぺ・ドゥナ、イ・ジウン、イ・ジュヨン他 |
公開日、上映劇場 | 2022年6月24日(金)~TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、なんばパークスシネマ、あべのアポロシネマ、TOHOシネマズ二条、MOVIX京都、T・ジョイ京都、京都シネマ、OSシネマズミント神戸、109シネマズHAT神戸ほか全国ロードショー |
“ニッポンの是枝”が撮った韓国は、
国境を越えてニッポンとつながっていく
これを観ながら、「ああ、『万引き家族』の別バージョンやなあ」と思った。これまで家族というものを描いてきた是枝監督の家族像は、「血縁があるとは限らないけれど、どこかで心が結ばれている」って感じかな。一つ屋根の下に住む、あるいは共に行動することで、家族以上に家族みたいになっていく人たち。少数かもしれないが、世間では確かに存在するケースなのだ。
物語は、ある豪雨の夜に始まる。一人の女が「赤ちゃんポスト」に赤ん坊を預けて立ち去った。それを見ていたのが、借金に苦しむクリーニング屋の店主サンヒョン(ソン・ガンホ)と、「赤ちゃんポスト」がある施設で働くドンス(カン・ドンウォン)。実は、赤ん坊を欲しがる家庭に横流しして金儲けをするベイビー・ブローカーというのが、彼らの裏稼業だ。こっそり赤ん坊を持ち去った二人だったが、思い直して戻ってきた母親ソヨン(イ・ジウン)に問い詰められ…。
なんと、母親とベイビー・ブローカーが一緒になって養父母探しの旅に出るという意外な展開になる。さらに、ベイビー・ブローカーたちを追いかけ、その犯行現場を押さえようとするスジン刑事(ぺ・ドゥナ)と、イ刑事(イ・ジュヨン)の二人組の動きが絡み合い、それぞれの事情が織りなす人間模様のタペストリーができあがっていく。ヒューマニズムとユーモア、まさに是枝監督の持ち味を染め込みながら。
本作により、今年のカンヌ国際映画祭で、ソン・ガンホが最優秀男優賞に輝いた(拍手!!)。『パラサイト 半地下の家族』(2019年/ポン・ジュノ監督)の時とは全く違うキャラで、今回は不器用で悪人になり切れない悪人、でも正義感ゆえに突っ走ることもあるという複雑な人物を演じた。また、是枝監督とは『空気人形』(2009年)以来、再び組んだぺ・ドゥナにも注目!彼女もはや40代。あいかわらずキュートな容姿だが、経験積んで、より機微を感じさせる演技を披露している。そのほか、赤ん坊も含め、達者な演者ばかりだ。シンガーソングライターと俳優の二刀流で、是枝監督が惚れ込み、韓国でも大人気のイ・ジウンは今後も活躍の場を拡げていくだろう。
「是枝監督がなぜ韓国で?」と思う人も多いでしょうが、彼自身がいろいろな場で答えているように、人的なつながりが生んだもの。最近公開された李相日監督『流浪の月』で撮影監督を務めた韓国の名宝ホン・ギョンピョが、この作品でも自然光や自然のたたずまいを重視した素晴らしい映像で魅了する。
日本では赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」が2007年に熊本慈恵病院に設置され、今年1月、同病院で国内初の内密出産が行われたという報道があったが、韓国の赤ちゃんポストに預けられた赤ちゃんの数は、日本と比べ相当多いらしい。そういう状況を踏まえ、人の命とは?と問いかけてくるこの映画のクライマックスから結末に至る道は、ひとすじの希望を見出そうとする道。なんの説明もなく、さりげなく映し出されるラストシーンは忘れがたい。ほろりとさせるような哀愁と、苦いも甘いも詰め込んだ人生のスパイスがそこにあった。
(宮田 彩未)
公式サイト: https://gaga.ne.jp/babybroker/
配給:ギャガ
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