制作年・国 | 2022年 日本 |
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上映時間 | 1時間52分 |
原作 | 立川志の輔(河出文庫版)/漫画:芝崎侑弘(小学館ビッグコミックス刊) |
監督 | 中西健二(『花のあと』『青い鳥』) |
出演 | 中井貴一、松山ケンイチ、北川景子、岸井ゆきの、和田正人、田中美央、溝口琢矢/立川志の輔、西村まさ彦、平田満、草刈正雄、橋爪功 |
公開日、上映劇場 | 2022年5月20日(金)~大阪ステーションシティシネマ、梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、全国のMOVIX系、イオンシネマ系、TOHOシネマズ(二条、西宮OS)など全国ロードショー |
世界を驚愕させ、日本を列強諸国から守った「大日本沿海與地全図」。
いま明かされる、知られざる完成秘話とは――?
現在の衛星画像による地図とさほど違わない「大日本沿海與地全図」(伊能図)(1821年)は、200年前に完成したものとは思えない程の正確さと緻密さだ。それを作ったのは伊能忠敬と今まで信じてきたが、伊能は地図が完成する3年前に亡くなり、その後弟子たちが必死で完成させたという。この話を立川志の輔が創作落語に盛り込み、“落語を超える傑作譚”として大評判となった。それに衝撃を受けたのが中井貴一。常々時代劇の火を絶やしたくないと思っていた中井は、「是非時代劇映画にしたい!」と自ら企画を立ち上げ、映画『大河への道』が完成したのである。
千葉県香取市の職員が、地元を盛り上げるための秘策として「伊能忠敬をNHK大河ドラマで採り上げてもらおう」と提案。一介の市役所職員による“大河への道”への奮闘努力と、江戸時代の伊能亡き後の弟子たちの決死の奮闘ぶりとを同時進行させながら、肝心の伊能忠敬を登場させずに、時にコミカルに、時にハラハラと、一つの目的のためにチーム一丸となって闘った強い精神力に興奮しながら、壮観な完成図にひたすら感動の涙に浸れる、笑って泣ける傑作時代劇!
中井貴一は、初めは裏方でもいいと言っていたらしいが、映画完成への道をリードする座長を務められるのは彼を置いて他に居ない。市役所の職員役の俳優陣に江戸時代の役柄も演じさせるダブルヘッダー方式で、現代の顔と江戸時代の顔の両方を楽しめる。特に、出世とは縁遠い主任役と、伊能の弟子たちを命懸けで守る高橋景保役を、人情味あふれる誠実さで中井貴一が魅了する。そして、そんな中井貴一と補佐役を務める松山ケンイチとの掛け合いが実に面白いのだ。率直な物言いでベテラン勢を呆れさせたり、知識の低さを露呈させては素直な疑問で問題提起したり、本作のチャームポイントとなっている。
他にも、気風のいい伊能の元妻役の北川景子や、幕府の隠密役の西村まさ彦、頑固で変わり者の脚本家役の橋爪功に、地図製作チームのまとめ役の平田満と、ベテラン勢の滋味深い人物像が歴史を辿るだけではなく、人間味のあるドラマとして奥行を出している。そして、何と言っても圧巻なのが、江戸城でのシーン。伊能の不在と公金横領を怪しんだ幕府方が、将軍様の前で直々に申し開きを行うよう高橋景保に命じたのである。そして、そして、将軍・徳川家斉に別室にて披露したのが完成したばかりの「大日本沿海與地全図」(伊能図)だったのである。
忠敬は、17歳の時に4つ年上の子持ちの伊能家の娘の所に婿入りし、伊能家の稼業を大きく拡大させる程の財を為し、49歳であっさりと隠居する。そして、兼ねてより興味のあった天文学を学ぶことにより第二の人生を始める。そして、当時未開拓地だった蝦夷地の地図作成を幕府より依頼され、その完成度の高さを認められ、日本全土の地図作成を仰せつかることになる。55歳から73歳まで地球一周分を歩いて計測した伊能忠敬とその弟子たち。それらの地図は驚異的なほど精緻を極め、日本の覇権を狙う列強諸国にはその技術力の驚異的な高さで容易に付け入る隙を与えなかったという。
日本が誇るべき偉人は、伊能忠敬と、「大日本沿海與地全図」(伊能図)を完成させた弟子たちと高橋景保と言えよう。これ程の偉業を成し遂げたのに、なぜ今まで大河ドラマにならなかったのだろうか。だが、こうして中井貴一のお陰で立派な映画になったのだから、少しは満足しようと思う。伊能忠敬を違う視点で描いた傑作時代劇、是非劇場でお楽しみ頂きたい。
(河田 真喜子)
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/taiga/
配給:松竹
©2022「大河への道」フィルムパートナーズ