制作年・国 | 2022年 日本 |
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上映時間 | 2時間30分 |
原作 | 凪良ゆう(「流浪の月」東京創元社刊) |
監督 | 李 相日(『フラガール』『悪人』『許されざる者』『怒り』) |
出演 | 広瀬すず、松坂桃李、横浜流星、多部未華子、白鳥玉季、増田光桜、趣里、三浦貴大、内田也哉子、柄本明他 |
公開日、上映劇場 | 李相日 広瀬すず、松坂桃李、横浜流星、多部未華子、白鳥玉季、増田光桜、趣里、三浦貴大、内田也哉子、柄本明他 2022年5月13日(金)~TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、あべのアポロシネマ、TOHOシネマズ二条、MOVIX京都、T・ジョイ京都、京都シネマ、OSシネマズミント神戸、OSシネマズ神戸ハーバーランド、109シネマズHAT神戸ほか全国ロードショー |
この愛を美しいと思うか、許せないと思うか。
その答えこそが、あなたや私の実像だ
これは、実に衝撃的な問題作である。それでいて、心の奥にある琴線に触れ、長くその音色をやめない。いつしか、代わり映えしない日常の中に埋没し、止まっていたと思ったのに、ふとした瞬間に、「あ!」。忘れていたその音色が動き出す。これはきっと、そういう映画だ。
とある公園。10歳の少女・家内更紗(白鳥玉季)はひとりで本を読んでいた。雨が降ってきたのに、彼女は家に帰ろうともしない。そこへ通りかかったのが、大学生の佐伯文(松坂桃李)だ。孤独の色を身にまとった文は、更紗に「うち、来る?」と声をかける。これが、すべての始まりだった。それから15年後の更紗(広瀬すず)は、ファミリーレストランで働き、恋人の中瀬亮(横浜流星)と暮らしている。日々は平穏に見えるが、彼女はけして忘れられない思い出を抱えていた。文と共に暮らしたかけがえのない2か月、その後に突然文と引き離されたこと。女児誘拐監禁事件の犯人として文は逮捕され、事件の当事者として更紗は“知られる人物”になったのだが、思いがけない場所で文と再会することになる。
原作は、2020年本屋大賞を受賞した凪良ゆうの同名小説。彼女はこれまで「どこまでも世間と相いれない人物を書いてきた」とのことだが、この映画の文と更紗もまた然り。ラストシーンを観ると、ますますそれが強く印象に残る。このふたりがひっそりと紡いだ時間、傷ついた心と心が寄り添いあうその感触、そして、世間という名の、冷ややかな膜。世間という皮膜を被りたがる人々は、自分たちを守るためなのか、自分たちに理解できないものを攻撃し、排除しようとするのだなあと改めて思う。
撮影監督として、『パラサイト 半地下の家族』(2019年/ポン・ジュノ監督)でも腕をふるった韓国映画界の名匠ホン・ギョンピョを迎え、美しく詩的な映像を作り出した。空や月、水などを映し込んだカットが、物語の背中を押すようで、ワンシーン、ワンシーン、再度じっくり味わいたくなる。そして、ホン・ギョンピョの力を買った李相日監督の手腕は、演出にもみごと冴えわたったようだ。広瀬すず、松坂桃李、横浜流星という、いま引く手あまたの3人は、たぶん本作で、また一つ殻を破ったことだろう。
そして、そうなのだ、この映画を美しいと思うかどうか。そこが、鍵。自分の心の底をのぞかざるをえない、そうさせてしまう作品なのだと思うと、実はとても怖ろしい部分を併せ持っているのかもしれない。
(宮田 彩未)
公式サイト:https://gaga.ne.jp/rurounotsuki/
配給:ギャガ
©2022「流浪の月」製作委員会