原題 | Audrey |
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制作年・国 | 2020年 イギリス |
上映時間 | 1時間40分 |
監督 | ヘレナ・コーン |
出演 | オードリー・ヘプバーン、ショーン・ヘプバーン・ファーラー(オードリーの長男)、エマ・キャスリーン・ヘプバーン・ファーラー(オードリーの孫)、クレア・ワイト・ケラー(ジバンシィの元アーティスティックディレクター)、ピーター・ボクダノヴィッチ(アカデミー賞監督賞ノミネート)、リチャード・ドレイファス(アカデミー賞受賞俳優)他 |
公開日、上映劇場 | 2022年5月6日(金)~大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、京都シネマ、シネ・リーブル神戸ほか全国ロードショー |
~人を魅了する微笑みの天使が、切ないほどに求め続けたものとは?~
初めてオードリー・ヘプバーンの顔をスクリーンで見た時、「こういう美しいひとに生まれついていたら、どういう人生を送るんだろうなあ」と、ため息をつきましたねえ。まさに彗星のごとく現れ、初主演の『ローマの休日』でアカデミー賞主演女優賞を獲得したのはオードリー24歳の時。このドキュメンタリー映画では、当時の初々しい姿や声に触れることができますが、その後の活躍により、ハリウッド映画における一つの時代を作ったのは確かでしょう。ほんと、輝いていましたねえ。『ローマの休日』のおきゃんな王女さまも、『マイ・フェア・レディ』のみごと大変身しちゃう花売り娘も、『ティファニーで朝食を』の自分らしさを大切にしたい女の子も…。とんがった近寄りがたい美しさでなく、つい微笑み返したくなるような親しみやすい美しさ。1993年にあっちの世界に行っちゃったオードリーだけど、今でも多くのファンがいるってこと、実によくわかります。だって、彼女は永遠に「銀幕の妖精」なのだから。
これが彼女についての初めてのドキュメンタリー映画で、構成的には、残存している昔の映像と、関係者へのインタビューという、わりとよくあるパターンですが、その内容に打たれました。彼女の生い立ちや、両親の離婚と父親との絶縁、ナチス占領下で少女時代に体験した苦労。その後、映画界で成功し、愛する人と出会って結婚するも、離婚を繰り返し、心の傷を大きくしてゆきます。あれほど有名になり、世界から愛されたオードリーが、大切に思う人に裏切られ、寂しい思いをしていたとは!父親にも、パートナーにも、求めて得られなかった真の愛。とりわけ、父親との再会についてのエピソードには胸が痛くなります。
晩年、彼女は愛を求めることを断ち切ったのか、自ら愛を与えることに力を注ぎます。ユニセフ親善大使。世界を駆け回り、幸少ない子どもたちと接している彼女の姿を、テレビで見たことがあります。年齢を重ねたけれど、しゃんとして背筋の伸びたオードリーの慈愛に満ちた表情は、若い頃とはまた違う美しさを放っているなあと、この映画で改めて確認しましたね。ヘレナ・コーン監督にとってオードリーは“ヒーロー”だったようですが、敬愛の気持ちとともに、ひとりの女性としてオードリーが抱えていた闇の部分を引っ張り出して見せた、その気持ちの強さを感じる作品です。
少女時代からバレリーナに憧れてレッスンを続けるも、結局はその夢をあきらめたオードリーの心をなぞるような演出で、著名なひとも含め3名のバレエダンサーが登場します。事実を追いかけるドキュメンタリーに華を添えるような、彼女たちの踊りもじっくり楽しんでくださいな。
(宮田 彩未)
公式サイト:https://audrey-cinema.com/
配給:STAR CHANNEL MOVIES
© PictureLux / The Hollywood Archive / Alamy Stock Photo
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