原題 | Deux |
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制作年・国 | 2019年 フランス・ルクセンブルク・ベルギー合作 |
上映時間 | 1時間35分 |
監督 | 監督・脚本:フィリッポ・メネゲッティ |
出演 | バルバラ・スコヴァ(『ハンナ・アーレント』『ローザ・ルクセンブルク』『ローラ』)、マルティーヌ・シュヴァリエ、レア・ドリュッケール、ミュリエル・ベナゼラフ、ジェローム・ヴァレンフラン |
公開日、上映劇場 | 2022年4月15日(金) 〜テアトル梅田、4月22日(金) 〜京都シネマ、シネ・リーブル神戸、6月3日(金) 〜 6月16日(木)シネピピア ほか全国順次公開 |
~二人の老女優の愛に満ちた、あたたかな眼差し~
LGBTQ+をテーマにした映画が増える中、本作は、ひっそりと愛を育み続けたレズピアンの物語。ニナとマドレーヌは、南仏モンペリエのアパートの最上階、エレベーターホールを隔てて向き合うふたつの部屋に住む隣人同士。ドアに鍵をかけることなく互いの部屋を行き交い、一緒に眠ったりする恋人同士。アパートを売って、20年前に二人が出会ったローマに家を買って一緒に住むのが夢。マドレーヌは、誕生日を祝いに来てくれた娘アンヌと息子に、今度こそニナのことを伝えようとするが、言い出せなかった矢先、悲劇が起こり、二人は引き離されてしまう。
ニナは、面倒見のよい隣人として、病院から帰ってきたマドレーヌの様子を知ろうと、アンヌや介護士と親しくなっていく。心配のあまり、夜中にこっそりマドレーヌの部屋に忍び込んだり、思わず大胆な行動に出てしまうニナ。ニナを演じるバルバラ・スコヴァは、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の『ローラ』(1981年)の主演女優。二人の距離が隔てられるほどに、マドレーヌへの想いの強さが胸に迫ってくる。
かつて夫との結婚生活はあったものの、幸せではなかったことが暗示されるマドレーヌにとって、ニナは残る人生を一緒に過ごしたい大切な恋人。ものが言えなくなったマドレーヌの、それでも意思を伝えようとする強いまなざしに心打たれる。
母の真実を受け入れられず、ニナに嫌悪をぶつけるものの、母の様子を見て、揺れ動くアンヌをレア・ドリュッケールが好演。台所のコンロにかかったフライパンの上で肉がじりじり焦げていく音や、ドラム洗濯乾燥機の回転音やドライヤーの音など、無機質な音が不穏に満ちた空気を醸し出し、二人の道行に不安を募らせる。ニナが、隣室の様子をうかがうため、ドアののぞき穴をのぞいたり、スリリングな展開に目が離せない。
老いて、人生の終わりにさしかかった者だからこその、穏やかな愛にあふれた二人の眼差しと満たされた表情と、凛とした芯の強さが忘れられない。
(伊藤 久美子)
公式サイト: https://deux-movie.com/
配給:ミモザフィルムズ
© PAPRIKA FILMS / TARANTULA / ARTÉMIS PRODUCTIONS – 2019