映画レビュー最新注目映画レビューを、いち早くお届けします。

松竹ブロードウェイシネマ『プレゼント・ラフター』

 
       

purelaf-pos.jpg

       
作品データ
原題 Present Laughter  
制作年・国 2017年 アメリカ
上映時間 2時間16分
原作 ノエル・カワード 『プレゼント・ラフター』
監督 ブロードウェイ版演出:モリッツ・フォン・スチュエルプナゲル シネマ版監督:デヴィッド・ホーン 衣装デザイン:スーザン・ヒルファーティ 照明デザイン:ジャスティン・タウンセンド
出演 ケヴィン・クライン、ケイト・バートン、クリスティン・ニールセン、コビー・スマルダーズ
公開日、上映劇場 2022年3月11日 (金)~なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹にて全国公開

 

ケヴィン・クラインのアドリブ満載の傑作コメディ!

ピークアウトを迎えた大人気喜劇俳優の遅すぎる“自分探し”

 

『キンキー・ブーツ』『パリのアメリカ人』『42ndストリート』等々、国内は勿論、ニューヨークのブロードウェイやロンドンのウエスト・エンドへ行っても中々観られない最高のキャストによるミュージカルやお芝居を、近くの映画館で臨場感たっぷりの大迫力で楽しめる《松竹ブロードウェイシネマ》シリーズ。今回は、60歳で演じた舞台劇『シラノ・ド・ベルジュラック』(2007-2008)の繊細なセリフ回しと大立ち回りの剣術で原作の素晴らしさを更に高めたケヴィン・クライン(現在74歳)が、70歳の時に演じた舞台劇『プレゼント・ラフター』を収録したシネマの登場である。


1900年代、二つの世界大戦や冷戦対立に自由民権運動などの時代の大きなうねりの中で、作家・俳優・音楽家・ファッション・エンタテイメント界でカリスマ的存在だったノエル・カワードによる戯曲『プレゼント・ラフター』(1943)の舞台版。50代半ばの大人気喜劇俳優が、多忙な日々の中で自分自身を見失いそうになる不安や葛藤を、元妻や秘書やプロデューサーに新たな恋人等々、一言では言い表せない大変ユニークな人々との丁々発止のテンポの良さで魅了する、爆笑連発の傑作コメディの舞台劇。


prelaf-500-1.jpgケヴィン・クラインはこの戯曲を20代で読んで、「これこそ演じたい芝居だ!」と思ったらしいが、当時は若過ぎたため断念。そして、主人公の年齢よりかなりオーバーした70歳で念願達成した次第。40年以上温めてきた戯曲だからこそ、ミドルエイジの喜劇俳優ギャビーが抱える年齢への不安や、本音で生きられなくなった役者の哀しみを体現することができて、主人公のギャリーがケヴィン・クラインにダブってしまうほどだ。


大人気喜劇俳優のギャリーの家には、今日も多くの人々がやって来る。家政婦や付き添い人に秘書たちが朝出勤すると、若い女性が書斎からガウン姿で出てくる。どうやらギャリーと一夜を共にしたらしい。スタッフたちはいつもの“お持ち帰り”とあまり気にも止めないが、若い女性は至って本気でギャリーにお熱のご様子。そこへ“腐れ縁”の元妻(正式には離婚していない)がやって来て、母親よりギャリーのことをよく知る秘書と「いつものことね」と呆れ顔で眺めている。


prelaf-550.jpg昼頃になりようやく起きて来たギャリー。その登場の仕方にもご注目。若い女性を見て「まだ居たの?」と少々気まずい顔をするものの、体よく追い出そうとする。連日面会希望者がわんさかいる中で、自作の脚本を売り込もうと必死に食い下がるストーカーまがいの作家や、長年ギャリーのキャリアを支えてきたプロデューサーたちに、妖艶な美貌で次々と男たちを惑わす人妻とか、一癖も二癖もある面々がギャリーの家の応接間を舞台に大騒動を繰り広げる。


ケヴィン・クラインと言えば、『ソフィーの選択』の罪深い役でセンセーショナブルな映画デビューを飾り、『ワンダとダイヤと優しい奴ら』や『五線譜のラブレター』等の映画や舞台で、シリアスドラマやコメディにミュージカルやアクションまでこなせる、実に息の長い天才的な俳優である。16歳年下のアイドル的な女優・フィービー・ケイツと結婚した時には意外に思ったが、ハリウッドでは珍しく離婚歴もなく33年間も円満に続いているというから驚きである。ケヴィン・クラインのアドリブ満載の大人のための超絶コメディを、是非劇場でお楽しみ頂きたい ♪♪♪ 

 

(河田 真喜子)

公式HP: https://broadwaycinema.jp/

配給:松竹  

©BroadwayHD/松竹

カテゴリ

月別 アーカイブ