原題 | 原題:原題:내가 죽던 날 英題:The Day I Died: Unclosed Case |
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制作年・国 | 2020年 韓国 |
上映時間 | 1時間56分 |
監督 | 監督・脚本:パク・チワン |
出演 | キム・ヘス、イ・ジョンウン、ノ・ジョンイ、キム・ソニョン |
公開日、上映劇場 | 2022年2月26日(土)~第七藝術劇場、2月25日(金)~アップリンク京都、近日~元町映画館 他全国順次公開 |
人生どん底、絶望の淵にいても、
未来へ活かせる可能性に懸ける、希望と再生の物語。
台風の夜、島で独り暮らしの少女が消えた。崖の上には靴が置いてあり、遺書も残されていて、誰の目にも自殺と映ったのだが、遺体はなく、動機も分からない。何かがおかしい――とまあ韓国映画にありがちな孤島での奇怪な因習だったり愛憎劇だったり、はてまた猟奇殺人かと思われたが、予感は見事に外れた。意外にも、にっちもさっちも行かなくなった孤独な女たちが、互いの可能性に懸けた希望と再生の感動作だったのだ。
警察大学出身で将来を期待されていた刑事・ヒョンス(キム・ヘス)は、泥沼の離婚訴訟の最中に人身事故を起こしてしまい休職中だった。懲戒審議会の前に少しでも心証を良くしようと上司の計らいで、少女失踪事件の任務に就く。仕事のため子供を作る機会を失い、お互い向上してきたつもりだったが、夫は長年浮気をしていたのだ。信じて疑わなかった夫の裏切りに人身事故が追い打ちを掛け、絶望の淵にいるヒョンスだった。華やかな“できる女”がよく似合うキム・ヘスが、陰鬱な表情の刑事役をスッピンで挑んで凄みがある。
島に向かうと、地元の警察や高齢者ばかりの島民らはとても協力的で、少女・セジン(ノ・ジョンイ)は台風の夜に崖から身を投げたのだろうというのが大方の観方だった。だが、自殺の決定的証拠はない。さらに、セジンは亡くなった父親の事件の重要証人で、警察保護の下、監視カメラに囲まれて一人で暮らしていた。父親や兄たちの犯罪を全く知らなかったセジンも、信じていた人の裏切りでどん底に突き落とされ、孤独な日々を送っていたのだ。
そして、セジンの最後の目撃者という順天(スンチョン)から来た女(イ・ジョンウン)の登場で、謎めいた展開が俄然活気づいていく。数々の作品でインパクトのある存在感を示すイ・ジョンウンは、逞しい母親役の『焼肉ドラゴン』(2018)や、控えめなキーパーソンとなる家政婦を演じた『パラサイト 半地下の家族』(2019)など、韓国でも名バイプレーヤーの一人だ。本作では、事故で寝たきりになった姪の面倒を一人で看ている口のきけない女を演じている。温情を内包した謎の女を表情や立ち居振る舞いで魅了するイ・ジョンウンからもう目が離せなくなる。
セジンの身辺を調べれば調べるほど、絶望の淵にある孤独な女たちの姿が浮かび上がり、自棄的になっていたヒョンスに大きな影響をもたらしていく。そして、ラストには粋な贈り物のようなシーンが用意されている。パク・チワン監督はキム・ヘスをイメージしながら脚本を書いたそうだ。「絶望の底にいても、人生をあきらめない“ヒョンス”という人物に完全に同化していた」とキム・ヘスへ賛辞を贈ったという。誰かを助けることによって、それぞれの人生が輝いていく。これまでの努力をムダにしないためにも、未来に活かされる選択をしていこう、と心からそう思わせてくれた。
(河田 真喜子)
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