原題 | Death on the Nile |
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制作年・国 | 2022年 アメリカ |
上映時間 | 2時間7分 |
原作 | アガサ・クリスティ『ナイル殺人事件』 |
監督 | ケネス・ブラナー(『恋の骨折り損』『魔笛』『シンデレラ』『オリエント殺人事件』『シェイクスピアの庭』『ベルファスト』) |
出演 | ケネス・ブラナー、ガル・ガドット、アーミー・ハマー、エマ・マッキー、トム・ベイトマン、アネット・ベニング、ラッセル・ブランド、アリ・ファザル、レティーシャ・ライト他 |
公開日、上映劇場 | 2022年2月25日(金)~TOHOシネマズ梅田、大阪ステーションシティシネマ、梅田ブルク7、TOHOシネマズなんば、なんばパークスシネマ、TOHOシネマズ二条、T・ジョイ京都、MOVIX京都、OSシネマズミント神戸、OSシネマズ神戸ハーバーランドほか全国ロードショー |
愛と確執と欲望が渦巻く…
豪華客船で起きた不可解な連続殺人事件に名探偵が挑む
もうすでに故人となったアガサ・クリスティだが、“ミステリーの女王”と呼ばれた彼女が著した小説は、時代を超え、国境を越えて読み継がれ、その発行部数は20億冊以上というから凄い。映画や舞台で演じられるし、後を追う作家にも多大な影響を与え、最近読んで面白かった『カササギ殺人事件』の著者アンソニー・ホロヴィッツも、アガサ・クリスティへのオマージュを披露している。クリスティ作品で私がとても気に入ったのは、『オリエント急行の殺人』。これが1974年に映画化され、シドニー・ルメット監督、アルバート・フィニーが名探偵エルキュール・ポアロを演じた『オリエント急行殺人事件』として世に出る。何度観てもドキドキさせられる傑作だ。ケネス・ブラナーも同作を映画化し、監督するとともに自らポアロを演じたが、断然、前者のほうが完成度は高かった。そして、ブラナーが挑む、クリスティ原作の第2弾がこれである。
映画は、戦場のシーンで始まる。「?」と思っているうちに、若き日のエルキュール・ポアロの恋と、なぜ彼が後年あの特徴的な髭を生やすに至ったかが語られる。これは、中心的な物語へと導くプロローグともいえる(最後に、エピローグ的なシーンも付け加えられている)。さて、お楽しみはこれからだ。ちょっと蓮っ葉な感じのする若い女性ジャクリーン(エマ・マッキー)は、男前のサイモン(アーミー・ハマー)と婚約したばかり。輝くような美しさと莫大な財産を持つ親友リネット(ガル・ガドット)にサイモンを紹介し、失業中の彼のために仕事を与えてほしいと頼んだ。ところが、あろうことか、サイモンはジャクリーンからリネットに鞍替え。エジプトで新婚旅行を楽しもうとするリネットとサイモンの前に、強烈な怒りと恨みを抱えたジャクリーンがしつこく姿を現し…。
ケネス・ブラナーはシェークスピア作品を映画化したりして、どっちかといえば地味な作風のものも多かったように思うのだが、ホントは派手好き、豪華好きなのかも。冒頭のパーティーシーンでのエロチックともいえる鮮烈なダンスの振り付け、エキゾチックなエジプトの色彩豊かな背景、ナイル川を行く豪華なクルーズ、宝石やシャンペンの輝きにくらくらするほどだ。そういうキラキラした雰囲気の中で、連続殺人事件が起こる。だが、ヒッチコック作品のように、背筋をゾクゾクさせるような怖さは感じられない。ケネス・ブラナーは、本作に限っていえば、どうもエンターテインメント映画としての要素のほうを重視したのではないかと思われる。そういうわけで、これを観たいと思う人々への入り口は広く取ってあるのだ。
クルーズ船という密室、容疑者はといえば乗客全員という、クリスティ得意のシチュエーション。リネットは言う。「私に大金がある限り、友人はいないわ」。そう、三角関係による恨みだけではない、リネットに嫉妬する者が山ほどいるわけで、「誰もが怪しい」ってことになっていく。やがて、ポアロが暴いた真相を知った時、あなたはどう思うだろう。「そこまでやるか!」というようなことを決断実行できる人間の業の怖ろしさ…とだけ言っておこうかな。
(宮田 彩未)
公式サイト:https://www.20thcenturystudios.jp/movies/nile-movie
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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