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『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』

 
       

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作品データ
原題 The United States vs. Billie Holiday
制作年・国 2021年 アメリカ
上映時間 2時間11分
監督 リー・ダニエルズ
出演 アンドラ・デイ、トレヴァンテ・ローズ、ギャレット・ヘドランド、ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ、ミス・ローレンス・ワシントン、ロブ・モーガン、ナターシャ・リオン、トーン・ベル他
公開日、上映劇場 2022年2月11日(祝・金)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹ほか全国ロードショー

 

人種差別に対する渾身の歌が、

“国家の敵”とされるこの不条理

 

昨年、『Billie ビリー』(2019年/ジェームズ・エルスキン監督)というドキュメンタリー映画を観た。ジャズ史に燦然と輝く歌姫ビリー・ホリデイについての未公開インタビューと、当時の映像を組み合わせた作品で、非常に興味深かったのだが、一つ「え?」と思うことがあった。そのインタビューとは、ビリーの伝記を書くためにリンダ・リプナック・キュールという女性が1960年代から10年間かけて関係者に聞いて回ったものの一部なのだが、彼女は何者かの妨害を受け続け、若くして不可解な死を遂げたという。自殺とされているが、他殺の疑いもあるらしい。


USBH-500-2.jpgそして、本作である。もう、タイトルからして、「ああ、やっぱりそうなんやなあ」と思った。この映画にも出てくる名曲「奇妙な果実」は、黒人へのリンチを告発する、ビリーの渾身の歌だ。彼女のライフワークの根幹をなす歌と言ってもいい。国家を正しく動かしていると誤解しつつ権力を振りかざす輩がその歌の内容に注視し、そこに公民権運動を後押しする力や、尋常でない恐れを感じた時、どうするか。陰険に、あるいは大胆に圧力をかけてくる。悩んで、苦しんで、アルコールやドラッグに救いを求めてしまうビリーの弱さ。だから、国家の手先は、歌を歌うだけでは逮捕できないので、麻薬使用の罪で追いつめていく。それでも、プロフェッショナルとして毅然とステージに立つことで、自分自身を励ましたビリーの強さに胸が熱くなってくる。


USBH-500-1.jpg音楽評論家の湯川れい子さんは、44歳の若さで亡くなったビリーについて、当時、救急車で病院をたらい回しにされたあげく、ストレッチャーの上で亡くなったという情報を得たと語っている。この不自然さ、惨さは何だろう。前述したリンダ・リプナック・キュールの死と、どこかで結びついているのではないだろうか。


USBH-500-4.jpg顔立ちは違うけれど、演技初挑戦というアンドラ・デイのビリー・ホリデイ像に引き込まれる。もともと歌の実力はピカイチだが、この映画での歌い方はかなり研究したのだろう。アンドラ・デイのほうが声のトーンはやや高いが、ワンフレーズ聞いただけでビリーだとわかる独創性、ベルベットのようなまろみのある声を彼女なりに再現し、楽しませてくれる。とりわけ、「奇妙な果実」をフルバージョンで歌うシーンは、亡きビリーの魂が合体したかのよう。ぜひ、じっくりと味わってほしい。近ごろは、並外れて歌の上手いシンガーや俳優を起用した音楽映画と出会うことが多く、洋楽好きにとっては嬉しいことだ。また、当時のスタイルに現代的な要素を融合させたプラダのステージ衣装も必見!思わずため息がもれるほどエレガントだ。

 

(宮田 彩未)

公式サイト:https://gaga.ne.jp/billie/

配給:ギャガ

©2021 BILLIE HOLIDAY FILMS, LLC.

 

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