原題 | Deliver Us from Evil |
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制作年・国 | 2020年 韓国 |
上映時間 | 1時間48分 |
監督 | 監督/脚本:ホン・ウォンチャン |
出演 | ファン・ジョンミン、イ・ジョンジェ、パク・ジョンミン、オ・デファン、チェ・ヒソ、ソン・ヨンチャン、パク・ミョンフン、白竜、豊原功補 |
公開日、上映劇場 | 2021年12月24日(金)~シネマート新宿、グランドシネマサンシャイン池袋、梅田ブルク7、シネマート心斎橋、アップリンク京都、京都みなみ会館、近日~元町映画館 他全国順次公開 |
韓国の名優二人が繰り広げる
クールで熱い死闘の果てに救済はあるのか!?
「新しき世界」のファン・ジョンミンとイ・ジョンジェが7年ぶりにタッグを組んだ。ファン・ジョンミンは言わずと知れた韓国を代表するオールラウンドプレイヤー。一方のイ・ジョンジェは「イカゲーム」とはイメージ一新。毒々しいアロハにタトゥー姿でナタを振り回すイ・ジョンジェの狂気とビジネスマン然とした風貌で次々に屍の山を築くファン・ジョンミンの静かな凄みがぶつかり合う筋金入りのノワール・アクションだ。
国家情報院の工作員だったインナム(ファン・ジョンミン)は、突如「時代は変わった」の一言で解任され組織に追われる立場となる。恋人を残し出国して8年、暗殺者として漂う日々を送っていた。裏稼業に手を染め生きる目的もない、そんな生活に見切りを付け夢の楽園へと脱出をはかる寸前、バンコクに住む別れた恋人が謎の死を遂げる。身元確認に呼ばれたインナムは彼女の娘が行方不明になっていると知り、死因の究明と残された娘の捜索に乗り出す。そこへレイ(イ・ジョンジェ)という最強にして最狂の追手が迫る。
韓国映画のはずが、いきなり登場する豊原功補、飛び交う日本語、入れ墨に血しぶきと初っぱなから凄い迫力で何が始まるのかと思わず身構える。役名が”コレエダ”というのは日本が世界に誇る是枝裕和監督へのオマージュだろうか。短いシーンに色々詰め込んでくれる。続いて映る中華そばののれんに、やっぱりここは日本?と思ったのも束の間、舞台はタイのバンコクへ。一方、韓国ではインナムに恨みを持つレイが血眼になってその行方を追っていた。三国を股にかけての追跡劇の始まりだ。
さらには警察やタイの裏組織まで加わり、追う側と追われる側が入り乱れて手に汗握るバトルの連続。銃撃戦ありカーチェイスありで「殺し合う理由、そんなものは忘れた」というキャッチコピーが示す通り、血で血を洗う凄まじさだ。そんなヒリヒリした空気のなか、一服の清涼剤となるのがインナムの現地ガイド・ドラァグクイーンのユイ(パク・ジョンミン)だ。このユイが抜群の存在感で魅せてくれる。登場シーンからして秀逸で思わず声がもれた。今回は主要キャストだが、さほど露出のない作品でも印象に残る俳優なのだ。ぜひ注目して欲しい。
主の祈りをモチーフにしていると語るホン・ウォンチャン監督。聖書に”我らを悪より救い出したまえ”という一節があるが、神の視点で見るならば救済は悔い改める者にも与えられるはず、そう考えると救われる気がする。また、我々観客への小さな救いもある。その一つはインナムが野良犬にクラクションを鳴らすシーンだ。インナムの隠れた人間性が垣間見えて、息つく間もない程の緊張感の中ほんの一瞬、心が休まるシーンだ。
【ファン・ジョンミン(左)とホン・ウォンチャン監督】
本国のインタビュー記事によると物語よりも人物にスポットが当たる作品にしたかったそうで、往年の名作「サムライ」(ジャン・ピエール・メルヴィル監督1967)や「ドライブ」(ニコラス・ウィンディング・レフン監督2011)にも通ずるものがあるとか。「パラサイト 半地下の家族」のホン・ギョンピョ撮影監督による映像の切り取り方も格別で静と動のコントラストがみごとだ。挟まれるショットが美しければ美しいほどその後のシーンの破壊力は大きくロングテイクで捉えた格闘シーンは迫力満点。バンコクの赤茶けた色見は埃っぽい空気を感じさせ、インナムが少女に買い与えるワンピースの花柄やユイのカラフルな衣装がモノトーンの作品世界に鮮烈な印象を与える。とにかくスタイリッシュでスケール感も見応えも満足度MAX!
(山口 順子)
公式サイト:https://tadaaku.com/
配給:ツイン
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