原題 | PINOCCHIO |
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制作年・国 | 2019年 イタリア映画 |
上映時間 | 2時間2分 |
原作 | カルロ・コッローディ「ピノキオの冒険」(1883年発行) |
監督 | ・監督/共同脚本:マッテオ・ガローネ(『ゴモラ』『リアリティー』『五日物語 3つの王国と3人の女』)、マッシモ・チェッケリーニ ・プロデューサー:ジェレミー・トーマス(『ラストエンペラー』『戦場のメリークリスマス』『五日物語 3つの王国と3人の女』など) |
出演 | ロベルト・ベニーニ(『ライフ・イズ・ビューティフル』)、フェデリコ・エラピ、マリーヌ・ヴァクト(『17歳』)、ロッコ・パパレオ、マッシモ・チェッケリーニ |
公開日、上映劇場 | 2021年11月5日(金)~大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ西宮OS、京都シネマ 他全国ロードショー |
『五日物語 3つの王国と3人の女』の世界に再び浸れる喜び!
イタリアの鬼才、マッテオ・ガローネ監督が贈る
“ピノッキオの真実“
ルネッサンスの頃から数多く描かれてきた神話の世界のような幻想的な映像美で、“恐ろしくも美しい寓話“の世界観を記憶に刻み込んだ『五日物語 3つの王国と3人の女』(2015年)。自分の欲に駆られるあまり、魂を悪魔に売り渡したような恐ろしい目に遭う3つの王国の3人の女たちの物語。それは、他に類を見ない斬新なビジュアルと深い人物描写で、一度観たら忘れられない強烈なインパクトを残した。その監督とプロデューサーが再びタッグを組んで世に送り出す寓話は、誰もが知る“嘘をつくと鼻が伸びるあのピノッキオ”!
ディズニーのアニメ版しか知らない私は、1833年にイタリアで発行された原作を読んだことがない。本作は、その原作に忠実に、『五日物語 3つの王国と3人の女』のスタッフやイタリア人のキャストが結集して創られた、イタリア版本家本元のピノッキオ物語である。ピノッキオが運命に翻弄されるように辿る地も、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』でジェームズ・ボンドが飛び降りた石橋をピノッキオが駆けて行くイタリア南部のマテーラやトスカーナ地方の丘陵地など、見覚えのある風景が広がり嬉しくなってくる。
丸太からピノッキオを作った貧しい木工職人のジェペットを演じたのは、『ライフ・イズ・ビューティフル』(1997年)でカンヌ国際映画祭グランプリとアカデミー賞®で主演・外国映画・音楽賞などに輝いたロベルト・ベニーニ。あのマシンガントークは健在で、無一文で食堂に入っては「黙っていたら食わせてやる」と店主を困らせる程。一晩で彫り上げた男の子の人形が喋り出すと、嬉しさのあまり、「息子ができた―!」と大声で叫びまくる。彼の孤独で惨めだった人生がパァっと輝く瞬間だ。
最愛の息子・ピノッキオのために、ボロボロの赤いベッドカバーを服に仕立てたり、一張羅の自分の衣服を形に教科書を買い与えたりするが、ジェペットの想いはピノッキオには通じない。学校をサボって人形劇を観に行って、そのまま劇団に連れ去られてしまう。そこからがピノッキオの大冒険の始まりだ。一方、行方不明になったピノッキオを世界の果てまでも探し出そうと旅立つジュペット。果たして、二人は再会を果たすことができるのか?
この物語でおもしろい処は、ピノッキオが無分別な行動をとろうとする度に助言してくれる存在が現れることだ。「親に従わない子はひどい目に遭うよ」とか、「欲張って自分のことしか考えない子はひどい目に遭うよ」とコオロギが、さらに、人間の子供になりたいと願うピノッキオに、「いい行いをしなさい。学校へ行きなさい。そうすれば人間の子供になれるわ」とか、「よく考えて行動するのよ。きっと幸せになれるわ」と優しい妖精が助言してくれるのだ。それらを守らなかったばかりに、せっかくもらった金貨を騙し取られたり、楽な方へ安易に転んだばかりに醜態をさらすことになったり、命の危機に瀕したりと……。
これらは単に子供たちへ向けた教訓話ではない。今を生き辛く思っている人や、楽する道ばかり選択して努力しない人、欲張るあまり他を顧みない人など、大人になっても身につまされる教訓ばかりだ。ガローネ監督自身、「ありとあらゆる世俗の不条理が詰め込まれ、社会風刺もたっぷり。ピノッキオが失敗を重ねながら、かけがえのない人生の教訓を学んでいく寓話的なストーリーです」とテーマ性に言及している。
一見、”渋~いピノッキオ物語”という感じだが、マッテオ・ガローネ監督の美術や映像の美しさはさすがだ!細部にまでこだわった寓話の世界観が、ピノッキオの成長と共に「善良に生きることの大切さ」をリアルに実感させてくれる。ピノッキオの愚かさも子供らしい衝動そのもので微笑ましい。貧しく孤独なジュペットのピノッキオへの無償の愛や、成長と共にジェペットの深い愛情を理解していくピノッキオ。お互いの愛情と思いやりこそ人間らしい親子愛として、本作をより感動的なダークファンタジーへと盛り上げている。(是非、親子で観に行って頂きたい映画です。)
(河田 真喜子)
公式サイト: http://happinet-phantom.com/pinocchio/
公式twitter:@Pinocchio_2021
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ
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