映画レビュー最新注目映画レビューを、いち早くお届けします。

『リスペクト』

 
       

respect-550.jpg

       
作品データ
原題 RESPECT
制作年・国 2021年 アメリカ
上映時間 2時間26分
監督 リーズル・トミー
出演 ジェニファー・ハドソン、フォレスト・ウィテカー、マーロン・ウェイアンズ、メアリー・J・ブライジ、オードラ・マクドナルド、マーク・マロン、ヘイリー・キルゴア、セイコン・セングロー、スカイ・ダコタ・ターナー他
公開日、上映劇場 2021年11月5日(金)~TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、なんばパークスシネマ、あべのアポロシネマ、TOHOシネマズ二条、MOVIX京都、T・ジョイ京都、OSシネマズミント神戸、109シネマズHAT神戸ほか全国ロードショー

 

見応え十分、聴き応え十二分!

伝説に残る音楽映画がまたひとつ

 

アレサ・フランクリンといえば、天にも届くようなパワフルで情感豊かな歌声を思い出します。その一声を聞くだけで、耳が釘付けになり、心を鷲づかみされるような。“ソウルの女王”と呼ばれていただけの力量と存在感が確かにありました。そのアレサの半生を映画化するにあたって、なんと生前のアレサ本人から主役に指名されていたのが、ジェニファー・ハドソン。映画デビュー作『ドリームガールズ』(2006年/ビル・コンドン監督)で圧倒的な歌声を披露し、その後、歌手としても活動を拡げ、第51回グラミー賞で最優秀R&Bアルバム賞にも輝いた実力の持ち主です。音楽好きはもちろんのこと、音楽にそれほど関心がない人でも、彼女の声を聞けば、「凄い!」と思わざるを得ません。


respect-500-1.jpgお話は、10歳のアレサ(スカイ・ダコタ・ターナー)の日々から始まります。1952年のアメリカ・デトロイト。説教師としても有名な牧師のC.L.フランクリン(フォレスト・ウィテカー)を父に持つアレサは、教会の礼拝のみならず、自宅での夜のパーティーで歌うために、眠っているところを起こされたりもしていました。その歌声は人々を魅了し、父の自慢の種となり、まさに「天才少女歌手あらわる!」だったわけです。そして、成長したアレサ(ジェニファー・ハドソン)は、父の強力なサポートでついにレコードデビューを果たします。


respect-500-2.jpg輝かしい道を歩んだと思えるアレサですが、最初はなかなかヒット曲に恵まれず、意外なほどに悪戦苦闘の日々を送ります。教会で人々を惹きつけたゴスペルでなく、ジャズやスタンダードな曲を歌うポピュラー歌手として彼女を売り出したいレコード会社の思惑がはずれたといえましょう。時代が求める音楽と歌手の個性をレコード会社がぴたりと合わせることができるかどうか、これが成功の鍵なんだなあとつくづく思います。そして、絶大な権力を持ち、頑固なステージパパのようにアレサを扱い、今なら完璧にパワハラ親父と言われる父親は、アレサが恋するテッド(マーロン・ウェイアンズ)との交際に猛反対。アレサが「テッドをマネージャーにしたい」と告げたとたん、ついに絶縁状態となります。


respect-500-3.jpgところが、夫になったこのテッドも、問題ありの男だったのです。アレサは、公民権運動を支持し、関わりを持っていましたが、社会的な黒人差別とともに、父や夫など同じ黒人の男性からの差別、DVも受けていたということが、映画の中で描かれています。その哀しみ、怒りはどれほどのものだったでしょうか。ですから、「この曲を不当な扱いを受けている人たちに捧げます」と前置きしてアレサが歌う『シンク』は胸に迫ってくるものがあります。


respect-500-5.jpg日本では、シドニー・ポラックが撮影・監督した、アレサ・フランクリン1972年のライブを堪能できるドキュメンタリー『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』が今年初めて公開されました。ジェニファー・ハドソンと、実際のアレサ・フランクリンそれぞれの声を聴き比べてみても面白いでしょう。どちらも突き抜けるようなパワフルな響きを出せる声ですが、ご本人のほうにまろやかさ、料理の出汁でいえばうまみのようなものをより濃く感じました。「天才の蔭に、人知れぬ苦難あり」…それでも歌うことを諦めなかったアレサの情熱がほとばしる必見作。南アフリカ出身のリーズル・トミーにとっての初長編映画監督作は、今後の活躍が期待される仕上がりだと思いましたよ!

 

(宮田 彩未)

公式サイト:https://gaga.ne.jp/respect/

配給:ギャガ

©2021 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

 

カテゴリ

月別 アーカイブ