原題 | An American in Paris - The Musical |
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制作年・国 | 2018年 イギリス |
上映時間 | 2時間19分 |
監督 | 【映画版監督】:ロス・マッギボン 【演出・振付】:クリストファー・ウィールドン 【プロデューサー】:ジョシュア・アンドリューズ、スチュアート・オーケン、オースティン・ショウ |
出演 | ロバート・フェアチャイルド、リャーン・コープ、ハイドゥン・オークリー、ゾーイ・レイニー、デイヴィッド・シードン=ヤング、ジェーン・アッシャー |
公開日、上映劇場 | 2021年 10月15日(金)~なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都 他全国順次限定公開 |
不朽の名作・映画『巴里のアメリカ人』の舞台版
自由に生きられる喜びを、二人で踊れる幸せに載せて
ジーン・ケリーのタップとレスリー・キャロンのダイナミックなダンスが印象的なミュージカル映画『巴里のアメリカ人』(1951年ヴィンセント・ミネリ監督)を観たことがあるだろうか。第二次世界大戦直後のパリ、ノートルダム寺院の近くにある劇場・シャトレ座を舞台に、美しいバレリーナを巡る3人の若者たちの恋模様を、希望と愛あふれるガーシュイン兄弟の名曲とダンスで彩る不朽の名作。特に、バレエ団での人間模様とあって、ミュージカルの中でもバレエの要素が強い作品でもある。本作は、その舞台版である『パリのアメリカ人』の2018年ロンドン公演を収録したもので、現役のバレエダンサーを主役二人に起用した演出は、ロマンチックな世界観をさらに魅力的に拡げている。《松竹ブロードウェイミュージカル》の中でも傑作撰のひとつとしておススメしたい作品。
第二次世界大戦が終了して歓喜に沸くパリ。連合軍に従軍していたアメリカ兵たちも母国での戦勝パレードに参加しようと帰国を急ぐ中、ただ一人パリで何かを追い求める青年がいた。画家を目指すジェリー(ロバート・フェアチャイルド)だ。彼は街中でキラッと光る宝石のような女性を見つけ、それ以来彼女を追い求めてパリの街をさまよっていた。ある日、アメリカの大富豪の娘マイロ(ゾーイ・レイニー)の誘いで見学に行ったシャトレ座バレエ団のオーディションで、ついに彼女を見つける。誰よりものびやかで華麗に踊るリズ(リャーン・コープ)だったが、どこか悲しげ。それでも、リズとの出会いを“ビギナーズ・ラック”と信じるジェリーは、マイロの想いをよそにリズを誘い続ける。
シャトレ座のオーナーの息子アンリ(ハイドゥン・オークリー)は、リズと結婚してバレエ団を引き継ぐ予定だったが、密かにアメリカのショービジネス界で活躍することを夢見ていた。もう一人、ジェリーのパリ滞在を助けるピアニストの友人・アダム(デイヴィッド・シードン=ヤング)も、リズの才能と美しさに魅了され、彼女のために作曲をしていた。リズに恋する3人の若者と、ジェリーが画家として成功するようパトロンとなって支援しながらも想いが届かない孤独なマイロ。
暗くて悲惨な戦争が終わってようやく訪れた平和。だが、戦場となったヨーロッパの人々は戦争の傷跡を抱えて生きていた。そんな時代を背景に、本当の意味で自由に生きる歓びを謳歌する若者たちの姿がまぶしい豪華なミュージカルである。「ダンスは生きる歓びを表現するもの」、ジェリーとリズが踊るシーンが一番の見所。愛を確かめ合うように気持ちがひとつになるパ・ド・ドゥ(男女ペアの踊り)で最高潮を迎える。
ガーシュイン兄弟の名曲に乗って踊るジェリーとリズ、「二人で踊れるだけで最高に幸せ!」。ニューヨーク・シティ・バレエ団のプリンバルであるロバート・フェアチャイルドと、ロイヤル・バレエ団のリャーン・コープの真骨頂が発揮され、その華麗な世界観にため息が出る。
2014年12月に始まった舞台版『パリのアメリカ人』のワールドツァーの最初の公演先はパリのシャトレ座だった。そう、この物語の舞台となった劇場である。丁度オペラ座バレエ公演を観にパリを訪れていた私は、ロイヤル・バレエ団のリャーン・コープに興味を持って本作を観に行っていたのだ。舞台版ならではの場面転換の巧みさや、歌だけでなくバレエならではの繊細かつダイナミックな心情表現にすっかり魅了されてしまった。リャーン・コープの出演はこのパリ公演だけだと聞いていたのだが、あまりにも好評だったのでその後のツアーにも参加していたようだ。確かに、彼女の可憐で優雅な佇まいは、リズそのもの。この貴重な舞台版『パリのアメリカ人』は見逃せない逸品だと思う。
(河田 真喜子)
公式サイト:https://broadwaycinema.jp/
配給:松竹
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