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『メインストリーム』

 
       

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作品データ
原題 Mainstream  
制作年・国 2021年 アメリカ映画
上映時間 1時間34分
監督 監督・脚本:ジア・コッポラ (『パロアルト・ストーリー』) 共同脚本:トム・スチュアート
出演 アンドリュー・ガーフィールド マヤ・ホーク ナット・ウルフ ジョニー・ノックスヴィル ジェイソン・シュワルツマン アレクサ・デミー コリーン・キャンプ
公開日、上映劇場 2021年10月8日(金)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、MOVIX京都 他全国ロードショー

 

スマホなしでは生きられない現代に鋭く斬り込んだ衝撃作!

YouTuber の間違った価値観に誘導される恐怖

 

誰でもあっという間に主人公になれるSNSの時代。今やスマホを使ってクリアな写真や動画に加え、“言葉”を駆使した情報発信が可能な時代。他者の認証「いいね」や再生回数に左右され、YouTuberの誘導に価値観を歪められる危険性もある。『メインストリーム』はそんな現代の狂乱の恐怖に鋭く斬り込んだ衝撃作である。


mainstreem-500-1.jpg具体的な目的もなく、スマホで撮った映像を編集してはYouTubeにアップしていたフランキー(マヤ・コッポラ)。ある日、ねずみの着ぐるみを着てチーズのPRをしていたリンク(アンドリュー・ガーフィールド)と出会う。人の心をグッと掴むようなトークに長けたリンクに次第に魅了されていく。フランキーは生活費のためにつまらないマジック・バーで働いていたが、リンクに「今とは違う自分になろう」とけしかけられ、仕事を辞めてYouTuberへの道を進む。そんなフランキーを心配そうに見ていた同僚のジェイク(ナット・ウルフ)も、作家志望を見込まれてライターとして参加することになる。


常軌を逸する程の破天荒さで注目を浴びていくリンクは、自らを「ノーワン・スペシャル(ただの一般人)」と名乗り、あっという間にカリスマYouTuberとなる。リンク主役のライブ配信もされるようになると、瞬く間に他を圧倒してしまう。ところが、誰でもコンプレックスを肯定することで前向きに生きられると視聴者に勇気を与えていたリンクだったが、あまりにも強引な手法でショーアップをしたために、とんでもない事態を引き起こしてしまう。


mainstreem-500-2.jpg面白ければ何でもあり、再生数や「いいね」を稼ぐためならどんなことでもOK!――いつの間にか歪められた価値観に誘導され、本来の自分を喪失してしまったことに気付いた人々は驚愕するしかない。


悪魔的カリスマ性を露わにしていくリンクを怪演したのは、『ソーシャル・ネットワーク 』や『アメイジング・スパイダーマン』『アンダー・ザ・シルバー・レイク』のアンドリュー・ガーフィールド。プロデューサーとしても本作の制作に関わっている。いつか自分らしさが発揮できることを夢見るフランキーを演じたマヤ・ホークは、ユマ・サーマンとイーサン・ホークの娘というから納得!本作でも誠実さを失わないソフトな存在で、今後が楽しみな女優である。


監督は、フランシス・フォード・コッポラの22歳で事故死した長男の忘れ形見で、ソフィア・コッポラを叔母に持つジア・コッポラ(34歳)。アンニュイな雰囲気で作品を膨らますソフィア・コッポラとは違い、日常の心もとない生活から抜け出そうともがく若者の気持ちに寄り添いながら、鋭い洞察力で問題点を浮き彫りにしている。勿論、表現方法や作品の質は別問題で、観る側の好みも違うと思うが、コッポラ一家の俊英であることに間違いはない。


「匿名のネットユーザーが作り出す、気まぐれなメインストリームに君臨し、翻弄され、暴走する若者は、果たして時代のスターか?ペテン師か? それとも被害者なのか―?」

本作のリンクを観て、悪魔だと思った。不特定多数のぽっかり空いた心の穴に付け入り、誤った価値観へ誘導、多くの人々が傷付こうがお構いなしで暴利をむさぼる。そんな危険なネット社会に、私たちは常にさらされていることに改めて気付かされた。

 

(河田 真喜子)

配給:ハピネットファントム・スタジオ

コピーライト:©2020 Eat Art, LLC All rights reserved.

公式HP:https://happinet-phantom.com/mainstream/

公式twitter:@mainstream_jp

公式instagram:@mainstream_jp

 
 
 
 

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