原題 | No Time to Die |
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制作年・国 | 2021年 アメリカ |
上映時間 | 2時間44分 |
監督 | 監督:キャリー・ジョージ・フクナガ 製作:バーバラ・ブロッコリ、マイケル・G・ウィルソン 脚本:ニール・パーヴィス、ロバート・ウェイド、スコット・バーンズ、キャリー・ジョージ・フクナガ、フィービー・ウォーラー=ブリッジ 主題歌:ビリー・アイリッシュ “No Time To Die” |
出演 | ダニエル・クレイグ、レイフ・ファインズ、ナオミ・ハリス、レア・セドゥ、ベン・ウィショー、ジェフリー・ライト、アナ・デ・アルマス、ラシャーナ・リンチ、ビリー・マグヌッセン、ラミ・マレック |
公開日、上映劇場 | 2021年10月1日(金)~全国ロードショー! |
ダニエル・クレイグ最後のボンド、本気度が伝わる入魂の一作
待ちに待った007シリーズの25作目! 「ゼロ・ゼロ・セブン」とつい口に出て、あわてて「ダブル・オー・セブン」と言い直す自分がなんだか年齢にそぐわず、背伸びしているように思うんですが(笑)、コロナ禍の影響で昨年4月から1年半も延期されてやっと公開にたどり着いただけに、期待度が半端ではなかったです。
しかも6代目ジェームズ・ボンド役のダニエル・クレイグ最後の作品。2006年の『007/カジノ・ロワイヤル』でシブーく登場し、本作が5度目の主演です。出演するたびに見違えるほど筋骨隆々となり、胸板の厚さが目について仕方がなかった。現在、53歳。結構、齢を重ねてはるんや!
ここでちょっとおさらいをします――。原作者のイアン・フレミング(1908~64年)は第2次世界大戦中、英海軍情報部での諜報員の体験をもとにジェームズ・ボンドを生み出しました。この人はイングランド生まれですが、名前からしてスコットランド系で、当然、ボンドもそうです。典型的なイングランド紳士と思われているのに、そうでないところがニクイ(笑)。
シリーズ第1作が1962年の『007/ドクター・ノオ』(当初、『007は殺しの番号』)。59年前のことです。初代ボンド役のショーン・コネリーはスコットランド人、影の薄い2代目ジョージ・レーゼンビーはオーストラリア人、3代目ロジャー・ムーアはイングランド人、4代目ティモシー・ダルトンはウェールズ人、5代目ピアース・ブロスナンはアイルランド人、そしてダニエル・クレイグはイングランド人。
こう見てくると、やはりコネリーが一番、ボンドらしく思え、ぼくにとっても永遠の“007”です。そして2番目に好きなボンドがクレイグ。なぜなら、ハリウッド色が際立つ娯楽路線から原点回帰を実現し、シリアスさを強調させてくれたからです。
前置きが長くなりましたが、さて、本題です。この作品に限って試写がなく、公開初日(10月1日)、朝一番で劇場へ駆けつけると、ほぼ満席でした。やはり「007」のブランド力は強烈ですね!
クレイグが登場してからはすべて過去の作品の人物が絡み、やや複雑な様相を見せます。本作も前作『007 スペクター』(2015年)の続編なので、いきなり観た人は少しとまどうかもしれませんが、それでも十分、楽しめるはずです。
MI‐6(英国秘密情報部)を退職し、ジャマイカで気楽に暮らしているボンドの元に、旧友のCIA(米国中央情報局)諜報員フィリックス(ジェフリー・ライト)から、ロンドンで生物兵器を研究している科学者がある組織に誘拐されたので、救出してほしいと依頼がきます。その研究にかつての上司M(レイフ・ファインズ)が絡んでいるらしい。
ボンドがキューバのサンティアゴ・デ・クーバへ向かってから、ドラマが加速的に動き出します。殺しのライセンス「00」がないのに、銃をバンバン発砲してええんかいなと思っているうち、ボンドの後釜ともいえるMI‐6のノーミ(ラシャーナ・リンチ)や可愛いパロマ(アナ・デ・アルマス)という2人の女性諜報員が大活躍します。女性の時代なんやなぁ~とつくづく実感。
前作でボンドと恋仲になったマドレーヌ(レア・セドゥ)も絡んできます。彼女はボンド・ガールではなく、ボンド・ウーマン。映画を観れば、納得していただけるでしょう。なにせ母性が光っていましたから。あっ、これ、ネタバレになるのでしょうかね(笑)。
Mが前作とは異なり、何となく不気味です。秘書のマネーペニー(ナオミ・ハリス)が随分、頼もしく感じられ、いろんな新兵器を提供するQ(ベン・ウィショー)はますますハイテク・オタクぶりを発揮。お馴染みの人物が登場し、愛車アストン・マーティンが爆走すると、あゝ、〈007ワールド〉に浸ってるんやと得も言われぬ喜びを感じます。
クレイグは体当たりで大熱演しています。橋の上からロープで舞い降りたり、オートバイで石段を駆け上り、アクロバットのように広場に着地したり。本作でもスタントマンを使わず、捨て身の演技を披露。エライ! これが最後のボンド役なのだという気概が溢れており、本気度がビンビン伝わってきました。
そのボンドと対峙するのが悪役のサフィン。この男に扮するラミ・マレックのクールな佇まいがゾッとする怖さをにじみ出しています。この人物こそ、「恐怖」の象徴。顔のブツブツが邪悪さを引き立てていたような……。
監督のキャリー・ジョージ・フクナガは日系アメリカ人。なるほど能面を使っていたのが納得できました。これが実にインパクトのある小道具でした。クライマックスの舞台が北方領土というのも、うーん、意味深。
おっと、忘れていました。ボンドと言えば、お酒です。シャンパンが出なかったのは意外でしたが、大好きなシェイクのウォッカ・マティーニをサンティアゴ・デ・クーバのバーでパロマと一緒に口にしているのを見てホッとしました。ラストのウイスキーは、ボトルは映らなかったけれど、スコッチ・シングルモルトの逸品、マッカランの50年に違いないでしょう。ボンドが愛するスコッチですからね。
あっと驚く想定外の結末でした。はて、次の26作目は誰が7代目ボンドに扮し、どんなシチュエーションで登場するのか興味津々です。007映画よ、永遠なれ~。
武部 好伸(エッセイスト)
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