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『Our Friend/アワー・フレンド』

 
       

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作品データ
原題 Our Friend 
制作年・国 2019年 アメリカ
上映時間 2時間6分
原作 マシュー・ティーグ「The Friend: Love Is Not a Big Enough Word」
監督 ガブリエラ・カウパースウェイト
出演 ケイシー・アフレック、ダコタ・ジョンソン、ジェイソン・シーゲル、チェリー・ジョーンズ、ジェイク・オーウェン、グウェンドリン・クリスティー他
公開日、上映劇場 2021年10月15日(金)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹ほか全国ロードショー

 

~涙を誘う闘病記を超え、人と人が生の根元でつながる奇跡~

 

アメリカの著名雑誌「Esquire」に掲載され、全米雑誌賞に輝いたマシュー・ティーグのエッセーをもとに映画化されたのがこれ。名匠リドリー・スコットがエグゼクティブ・プロデューサーとして参加、ドキュメンタリー作品からキャリアを磨いてきたブラジル系アメリカ人監督ガブリエラ・カウパースウェイトの手腕に引き込まれる佳作である。


ourfriend-500-1.jpgジャーナリストのマット(ケイシー・アフレック)と、舞台女優のニコル(ダコタ・ジョンソン)はふたりの娘にも恵まれ、親密な結婚生活を送っていた。だが、ニコルを病魔が襲う。末期がんと宣告されたのだ。看病と育児で疲れ切ったマットのもとに、ひとりの男ががやって来る。ニコルが独身だと思って以前に彼女を誘ったこともあるが、その後はマットとも友達になったデイン(ジェイソン・シーゲル)だ。彼はスタンダップコメディアンになることを諦めて量販店で働く身の上だが、仕事も恋人もニューオーリンズに置いて、マットたちが暮らすアラバマ州の田舎町フェアホープまで助太刀に来てくれたのだ。


ourfriend-500-2.jpg驚くべきデインの献身とともに彼が抱え持つ孤独の影、マットの葛藤や不安、ニコルの健気さと隠された苛立ち。そういう表と裏の感情が出たり引っ込んだりする有り様を、実にきめ細かく描いていると思う。登場人物たちの言動が感傷的に見えたり、暗鬱な死の影にすっぽりと取り囲まれたりすることを避けたかったのか、監督は物語を時系列では語らない。病気だと告知される前、ごくありふれた日常を楽しんでいる日々へと、頻繁に時を戻してゆく。観る者もそれによって、どこか息継ぎをしているかのように、その合い間に、死とは何か、生とは何か、愛情とは、友情とは何か、と考えさせられるのである。


ourfriend-500-3.jpgタイトル『Our Friend』には二通りの意味があるように思う。だいたいは、マットとニコルにとっての友達デインを指すのだろうが、マットとデインにとって今は去り行く友達といってもいいニコルを指すというとらえ方もあるのではないか。半端じゃない友情、そこらへんに転がっているその場を取り繕うような付き合い方とは次元が違う友情だ。一人の人間が死を迎えるとは、かくも大変ではあるが、身内でもないデインがすべてをきっちり見届け、すべてを確認するまでそばを離れない…そんな深い情を持ち得たとは、奇跡といえるのではないだろうか。


ケイシー・アフレックは『マンチェスター・バイ・ザ・シー』でも目を引きつけられたが、今回も抑制の利いた演技を披露していて、他の演者との優れたバランス感覚というものを感じさせる。往年の人気バンド、レッド・ツェッペリンの楽曲が重要な役割を担って使われていることも興味深い。

 

(宮田 彩未)

公式サイト: https://our-friend-movie.com/

配給:STAR CHANNEL MOVIES

©BBP Friend, LLC - 2020

 

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