原題 | 原題:Il Pleuvait des Oiseaux 英題:And the Birds Rained Down |
---|---|
制作年・国 | 2019年 カナダ |
上映時間 | 2時間6分 |
原作 | 「Il Pleuvait des Oiseaux」ジョスリーヌ・ソシエ著 |
監督 | 監督・脚本:ルイーズ・アルシャンボー |
出演 | アンドレ・ラシャペル、ジルベール・スィコット、レミー・ジラール |
公開日、上映劇場 | 2021年6月18日(金)~京都シネマ、7月9日(金)~シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸 他全国順次公開 |
~死を見つめながらも、愛は、人生を輝かせる。~
世間との交流を断ち、孤独に暮らす老人たちの姿をとおして、人生の終い方と同時に人生の輝きについても、希望をもって深く考えさせてくれる良作。
テッド、チャーリー、トム、三人の老人たちは、ケベックの森の奥深くで、愛犬とともに、湖で気ままに泳いだり、絵を描いたり、ギターを奏でたりして、ひっそりと暮らしていた。テッドが亡くなり、ひょんなことから、80歳の老女ジェルトルードが一緒に生活を始めることになる。子どもの頃、精神病院に入れられて以来、何十年も施設から出たことのなかった彼女は、今日からマリー・デネージュと名乗るわと名前も変えて、新しい人生を始める。マリーを気遣い、いたわるチャーリーの優しいこと。いつしか二人は愛を育んでいく。今まで虐げられてきたマリーが、この年にして初めて人に愛され、大切にされることの喜びを語る。マリーを演じたアンドレ・ラシャペルのきらきらした、無邪気な表情が忘れられない。老人の性を優しく美しく描いていて、マリーへの贈り物のようだ。
この映画で語られるもう一つの出来事が森林火災。数十年前の大規模な山火事で多くの人が命を落とした。以来、テッドが抱えていた心の闇。テッドが何枚も描き貯めていた絵の迫力に惹きつけられる。重い過去とともに、テッドは、ある想いをずっと心の奥底に大切にしまっていた…。小屋で眠っていた幾多の絵の行く末に希望が添えられる。
トムのウイスキーのグラスに小石を入れて、氷の代わりと微笑むマリー。茶目っ気な瞳が可愛らしく、ところどころにちりばめられたユーモアがほっこりとさせる。誰もが老いゆえの病を抱え、死を見つめている。遠くない距離で死を覚悟している。どういうふうに死を迎えたいのか。先に死んでいった者たちを残された生者が悼む歌を、酔いどれのトムがギターで弾き語り、心にしみる。尊厳死について賛否両論はあるだろうが、マリーがチャーリーにささやく「私が生きているうちは、死なないでね」という言葉は書き留めておきたい。どう終わったとしても、それぞれの人生は尊く、輝きと尽きせぬ魅力にあふれている、そんな監督のメッセージが、映画の余韻とともに深く心に残る。
(伊藤 久美子)
公式サイト:https://yasuragi.espace-sarou.com/
配給:エスパース・サロウ
©2019 – les films insiders inc. – une filiale des films OUTSIDERS inc.