制作年・国 | 2021年 日本 |
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上映時間 | 2時間7分 |
原作 | ケン・リュウ(早川書房「Arc アーク ベスト・オブ・ケン・リュウ」) |
監督 | 石川慶(『愚行録』『蜜蜂と遠雷』) |
出演 | 芳根京子、寺島しのぶ、岡田将生、風吹ジュン、小林薫、清水くるみ、井之脇海、中川翼、中村ゆり、倍賞千恵子他 |
公開日、上映劇場 | 2021年6月25日(金)~大阪ステーションシティシネマ、梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、あべのアポロシネマ、MOVIX京都、T・ジョイ京都、TOHOシネマズ二条、109シネマズHAT神戸、OSシネマズ神戸ハーバーランド、OSシネマズミント神戸ほか全国ロードショー |
~人間の飽くなき願望は、世界を本当に変えるだろうか~
いつまでも若いままで永遠の命を与えられる…ってことは、夢のようにすばらしいことで、人を本当に幸せにするだろうか…という問いを突きつけてくるのが、“不老不死”にまつわる作品である。吸血鬼の物語はもちろん、何度か映画化もされたオスカー・ワイルドによる小説『ドリアン・グレイの肖像』、映画では『コクーン』(1985年、ロン・ハワード監督)、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(2008年、デヴィッド・フィンチャー監督)などが頭に浮かぶが、これ以外にも実に数多く作られてきた。それだけ、人々の関心を集めやすいということだし、実際、叶うものなら永遠の命を手に入れたいと思う人も多いということだろうか。
この映画は、SF・ファンタジーの世界での受賞が続き、いま熱い視線を浴びている中国系アメリカ人作家ケン・リュウの短編を原作として、『愚行録』の石川慶がメガホンを取ったもの。ありきたりのSF映画的イメージを予想して見ると、「あれ、ちょっと違うな」と思うかもしれない。なんだか静かである。さまざまな人生がゆっくりと絡み、ほどけていく、その音にだけ耳を傾けているような気分になる、そんな静けさ。
ヒロインのリナ(芳根京子)は17歳。病院で生まれたばかりの自分の子どもを置いて、放浪の旅に出た。19歳になったリナは、ある日、ナイトクラブで踊り、エマという名の女性(寺島しのぶ)がリナの過激なダンスに目をつける。「興味があるなら、ここに来なさい」と、エマから渡された名刺の場所に行ったリナは、今まで見たこともないものを目にする。その会社では、依頼を受けて、人の遺体に“プラスティネーション”という施術をし、生きていた時の姿のままに保存していたのだ。エマの人となりと、この技術に魅せられたリナはそこで働き始め、やがて一歩進んだストップエイジングの施術を30歳で受ける。そうして、 “永遠の若さと命”を得た世界初の女性となるのだが…。
不思議な世界観だ。なぜエマがリナの踊る姿に注視したのかというと、実はプラスティネーションと関係があるのだということがわかってくる。サイエンスの世界を描きつつ、東洋的。けして西洋志向でない。だから、静かなのだろうか。気づくと、「死ぬ恐怖」と「死なない恐怖」、それらを胸の中で天秤にかけている自分がいた。
リナの人生を135歳までたどっていく壮大なお話は、時代によってカラーとモノクロ映像の使い分けがされ、後半に出てくる或る夫婦のラブストーリーがひときわ印象的。風吹ジュンと小林薫が心に残る演技を披露し、リナの人生にがっちり絡んでくるその理由と行く末が、しみじみとした余韻を奏でてくれる。
(宮田 彩未)
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/arc-movie/
配給:ワーナー・ブラザース映画
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