演技派のWエマがアクの強いキャラクターに挑んだ、

パンクでキッチュな魅力作

ディズニーから『クルエラ』の試写会に招待され、非日常時間を堪能！エマ・ストーンにエマ・トンプソンというWエマ、この配役だけでも十二分にワクワクさせられるが、起伏の豊かな物語展開は、冒険小説のページをめくっているかのよう。あの『101匹わんちゃん』に出てくるクルエラは、ディズニー史上最も悪名高い“ヴィラン”（悪役）といわれ、かつてグレン・クローズが『101』（1996年制作、スティーヴン・へレク監督）で演じ、さすがの凄みを出していた。本作は、少女の頃からファッション・デザイナーになりたいと思ったエステラの足跡をたどりながら、彼女がなぜ過激なクルエラという人物に変貌したのかを明かすとともに、その出生の秘密にまで迫っていく。

生まれつき頭の半分は黒髪、もう半分は白髪という個性的な髪の色、さらに負けん気が強く自由奔放な少女エステラは目立ちすぎて周囲とうまく折り合っていけない。学校を追い出され、優しい母キャサリン（エミリー・ビーチャム）と共にロンドンを目指すが、途中で立ち寄った場所で、母はあえない最期を遂げる。ひとりぼっちになった悲しみを胸に、何とかロンドンにたどり着いたエステラは、ジャスパー（ジョエル・フライ）とホーレス（ポール・ウォルター・ハウザー）という友を得る。彼らと同居しながら大きくなったエステラ（エマ・ストーン）の前に、自分の夢に最も近い人物が現れる。それは、一世を風靡するカリスマ・デザイナーのパロネス（エマ・トンプソン）だった…。

女優魂というのか、ど根性というのか、あの上沼恵美子さんが「女優さん、あれはみんな男性です」と言い切っていたのを思い出すのだが、このふたりのエマの丁々発止をご覧あれ！どちらもヴィランそのもの、そしてその戦いは迫力たっぷり。それに、エステラから激化したクルエルの衣装も、ファッション界の重鎮であるパロネスの衣装も、それぞれに目を引かれてしまう鮮烈さだ。ただ、もともとの『101匹わんちゃん』のお話にあった、クルエラが毛皮コレクターだということはすっぽり抜け落ちている。たぶん、当世の諸事情によるものなのかもしれない。

クルエラの外伝的な本作は、アドベンチャーであり、復讐劇である。変わりゆくエステラ、いや、どんどんアナーキーになってゆくクルエラにどこまでついていけるか。最後に降り立った位置をじっと見つめることで、この映画への距離感がわかるだろう。バックに流れるオールディーズの名曲たちも、実に心を弾ませてくれた。

（宮田 彩未）

公式サイト：https://www.disney.co.jp/movie/cruella.html

配給：ディズニー・ジャパン

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