原題 | 原題 Momenti di trascurabile felicita 英題Ordinary Happiness |
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制作年・国 | 2019年 イタリア |
上映時間 | 1時間34分 |
原作 | フランチェスコ・ピッコロ |
監督 | ダニエーレ・ルケッティ |
出演 | ピエールフランチェスコ・ディリベルト(ピフ)、トニー・エドゥアルト、レナート・カルペンティエーリ、アンジェリカ・アッレルッツオ、フランチェスコ・ジャンマンコ他 |
公開日、上映劇場 | 2021年3月12日(金)~ヒューマントラストシネマ有楽町、テアトル梅田、なんばパークスシネマ、京都シネマ、シネ・リーブル神戸ほか全国ロードショー |
突然の死が、思わぬドラマと笑いを呼び起こすイタリア的狂想曲
この世に別れを告げる日がいついつとわかるなら、どうするか?という質問(あるいは愚問)は昔から存在する。そんなこと知りたくもないから考えないという人もいれば、いやいや、期限がわかるならやりたいこと、やるべきことをきちんと済ませておきたいという人もいるだろう。ただ、後者が幸せな気持ちで最期を過ごせるかどうかはわからない。なぜなら、大半の人間は生に執着し、自然体で死を受け入れるなんてなかなか難しいものだから。
さて、私の大好きなイタリア映画が、まさにイタリア的なダメ親父を主人公に、期限付きの余生をどう過ごしたかを面白おかしく見せてくれる。マフィアもの映画の舞台としても有名なシチリア島のパレルモ、妻と娘と息子とともに暮らす技師のパオロ(ピエールフランチェスコ・ディリベルト)は、赤信号になった交差点をスクーターで間一髪すり抜けるというスリルに快感を覚えていた。だが、その日は違っていた。交差点に突っ込んできたバンに激突し、気づくと、大勢の死者でごった返す天国の入り口にいた…。
死ぬ直前にパオロの頭をよぎる“ささいな疑問”がおかしい。さらに、早すぎる死に納得がいかないパオロが、「健康のためにスムージーを飲んでいたのに」と抗議すると、天国の役人(レナート・カルペンティエーリ)が寿命計算システムのミスを認めるというのも笑える。そして、パオロの寿命は延び、元の世界に戻れることになったが、その余生とはたった1時間32分!
女好きで、ママ友や同僚に手を出してテキトーに遊び、そういうテキトーさゆえに妻のアガタ(トニー・エドゥアルト)から時には怒り、時にはあきらめの目で見られ、娘には携帯の着信拒否をされ…という、ありきたりのアカン夫が、残された1時間32分で、何とか家族の絆を結び直そうとする。その迷走の道程に現れるのは、アガタとの出会いから現在に至る情愛とすったもんだの歴史、他の女たちとのあれやこれやのエピソード、娘や息子の成長に伴う関係性の変化など。いい加減なところがありながら、なかなかに頑固なパオロが、消えゆくろうそくの炎になっている自分の命をかけて、大切なものを取り戻そうとする姿は、滑稽でありながらも愛おしい。
さて、結末を観たあなたはどう思うだろう。人間って奴は、新鮮だと感じたものに“すぐに慣れる”生き物だから、ゲットできた時間をそのまま新鮮なままにキープできるかなあ、と思ったりもする。ナンニ・モレッティ監督作品っぽいテイストがちょこちょこ顔を出すのは、ダニエーレ・ルケッティ監督がモレッティ作品に出演してたり、助監督を務めたりしたということと関係がないとはいえないだろうな、やっぱり。
(宮田 彩未)
公式サイト:https://one-more-life.jp/
配給:アルバトロス・フィルム
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