原題 | 英題:God exists,her neme is Petrunya |
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制作年・国 | 2019年 北マケドニア、フランス、ベルギー、クロアチア、スロヴェニア 合作 |
上映時間 | 1時間40分 |
監督 | テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ |
出演 | ゾリツァ・ヌシェヴァ、ラビナ・ミテフスカ |
公開日、上映劇場 | 2021年6月11日(金)~京都シネマ、7月9日(金)~シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸 他全国順次公開 |
~“伝統”という名の女性差別に立ち向かう~
32歳のペトルーニャは、就職の面接に落ちた帰り道、神現祭の十字架投げの神事(東方正教を信仰する東ヨーロッパの国々で毎年1月19日に行われる行事)に行き合わせる。司祭が川に放り投げた十字架を目指して、半裸の男たちが川に飛び込み競う。ペトルーニャもたまたま目の前に流れて来た十字架を見て、思わず服を着たまま飛び込み、なんと十字架を手にしてしまったのだ。しかし、男たちは、女が取ることは禁止されていると激怒し、十字架を取り上げ、もみ合いになる。騒動のすきを縫って、ペトルーニャは十字架を取り戻し、人混みから抜け出して家に帰る。ところが、警察に身柄を拘束されてしまう。手にした人を幸せにしてくれるはずの十字架は、ペトルーニャを騒動の渦中へとひきずり込むことになる。
映画の冒頭、母に面接だから行くように言われても起きようとしないペトルーニャ。太りぎみで、美人でもなく、無愛想。そんな女性が、母をはじめ警察署長や司祭やまわり中の人から、十字架を返すよう説教されても、頑として拒否し、自分が拾った十字架だから自分の物だと主張し続ける。川に集まっていた男たちが警察署に押しかけ、暴力的な騒ぎになっても、ひるまない。ますます強くなり、輝きを増していくペトルーニャの姿がみどころ。
ペトルーニャに肩入れする神事の取材に来ていたシングルマザーのテレビレポーターと、警察署で唯一、ペトルーニャに優しく接する青年警察官の存在が心強い。
舞台は、家父長制社会で、女性の社会的地位が総じて低いバルカン半島に位置する北マケドニア。2014年に、実際に女性が十字架をつかみ取って、地元住民や宗教関係者の怒りを買ったという実話に基づいている。
ペトルーニャが最後に十字架をどうしたのか。そのときのすがすがしい表情を見てほしい。彼女は見事に飛び立った。
(伊藤 久美子)
公式サイト⇒ https://petrunya-movie.com/
後援:駐日北マケドニア共和国大使館
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
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