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『世界で一番しあわせな食堂』

 
       

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作品データ
原題 Mestari Cheng 
制作年・国 2019年 フィンランド・イギリス・中国合作
上映時間 1時間54分
監督 監督・共同脚本:ミカ・カウリスマキ(『旅人は夢を奏でる』) 脚本:ハンヌ・オラヴィスト
出演 アンナ=マイヤ・トゥオッコ、チュー・パック・ホング、カリ・バーナネン、ルーカス・スアン、ベサ=マッティ・ロイリ
公開日、上映劇場 2021年2月19日(金)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹、他全国ロードショー

 

~探し求めて訪れた地で、待っていた宝物とは?~

 

日本から飛行機で約10時間、一番近いヨーロッパと言われ、森と湖とムーミンとオーロラ観光で有名な自然が美しい国、フィンランド。18年前の夏に訪れた時には、首都ヘルシンキは高層ビルも高速道路もなく、ゆったりと時間が流れているような閑静な佇まいの街だった。本作は、フィンランド北部のラップランドにある小さな村が舞台。上海から恩人を探しにやって来た父子と地元の人々との交流を通して、幸福度世界№1の国フィンランドに見る「しあわせ」の見つけ方を、そっと教えてくれるようなハートウォーミングな作品である。


chefcheng-500-1.jpg長距離バスで小さな村に降り立った中国人の父子、チェン(チュー・パック・ホング)とニュニョ(ルーカス・スアン)。近くの食堂へ行って尋ね人の名を言うが、誰も知らない。宿も無く、食堂のビュッフェ料理も口に合わず、疲れ果ててしまった父子。取り敢えず、オーナーのシルカ(アンナ=マイヤ・トゥオッコ)が離れのロッジを貸してくれることになる。翌日も来店客や警官などに尋ね回るが成果なし。


chefcheng-500-2.jpgそこへ、中国人の団体客がドド~っと食堂に入ってくる(そう、中国人の団体はどこ行っても半端ない数なんです!)。舌の肥えた中国人観光客は、ビュッフェ料理を見るなり「食べるもんがない!」と不平を言う。そこで、見かねたチェンが、近くのスーパーで手に入る材料を使って急ごしらえのチキンスープの麺料理を提供すると、あれ程騒がしかった中国人が黙々と満足そうに食べているではないか!? 何たるマジック!! そう、フィンランド料理といえばトナカイを使った料理が中心で、後はジャガイモやニンジンなどの付け合わせといった感じの単純調理の物が多く、どちらかというとワイルド系かな?

 

chefcheng-500-3.jpgその様子を見ていた常連客は勿論、シルカもびっくり! シルカは思いがけない収入を得たので、チェンにお金を渡そうとするが受け取らない。そこで、人探しを手伝う代わりにチェンにシェフとして働いてもらうことにする。常連のおじいさんたちも、最初は「あんなもん食えるか!」といぶかしげに遠目で見ていたが、勇気を出して一口食べてみたら、たちまち魔法にかかったようにトリコになってしまう。「医食同源」に基づいたチェンの料理は高血圧や糖尿病などの病気改善にも繋がり、大評判となる。その内、チェンが捜していた人の情報が入るが……。


chefcheng-500-4.jpg上海の一流シェフだったチェンが、なぜ店を畳んでフィンラン人の恩人を探しに来たのか――次第に明らかになるチェン父子の事情と彼の料理からも感じ取れる誠実な人間性に、シルカも村人も皆が魅了されていく。フィンランドの人々があまり口にしない見たこともないような食材を手早く調理するシーンがいい!キッチンを効率よく動き回るチェンを頼もしく見つめるシルカ。さらに、ふさぎ込んでいた息子ニュニョも、近所の子供たちと遊べるようになり、次第に明るさを取り戻していく。言葉は通じなくても、美食を提供することで受け入れられた中国人の父子。そして、釣りをしたりサウナでもてなしたり、夏祭りを楽しんだりと、フィンランド人の大らかさに、国籍を超えた幸せなひとときを感じることができる。


chefcheng-500-6.jpg監督は、フィンランドを代表する名監督アキ・カウリスマキの兄である、ミカ・カウリスマキ。悠然たるフィンランドの自然を舞台に、人と人との温もりのある繋がりを味わい深く魅せてくれる監督だと思う。フィンランドは北欧の中でもユーロ圏内なので物価は高く、福祉国家とはいえ収入の半分は税金で消える。それでも幸福度№1とは、物質や生活に対する価値観が違うのではないかと想像する。満足することなく次々と欲を出しては欲求不満になり、果ては絶望する。すぐそばにある「しあわせ」に気付きもしなければ、感じることもしない。そんな現代にあって、フィンランドの人々は物質的には質素かもしれないが、それでもガツガツせず、豊かな自然と共に大切な家族や友人たちとの時間を楽しんでいるように見える。そう、人生は楽しむためにあるのだから。

 

(河田 真喜子)

公式サイト:https://gaga.ne.jp/shiawaseshokudo/

配給:ギャガ

(C)Marianna Films

 

 

 

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