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『チャンシルさんには福が多いね』

 
       

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作品データ
原題 LUCKY CHAN-SIL  
制作年・国 2019年 韓国
上映時間 1時間36分
監督 キム・チョヒ
出演 カン・マルグム、ユン・ヨジョン、キム・ヨンミン、ユン・スンア、ペ・ユラム他
公開日、上映劇場 2021年1月8日(金)~ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル梅田、1月15日(金)~京都シネマ、近日~神戸元町映画館ほか全国順次公開

 

~ヒロインの一喜一憂が愛しく、幸せ探しの結末に共感!~

 

観た直後に「ああ、この映画、好き!」と、強く感じた。そして、そんなふうに感じられる作品が、年間いったい何本あるだろうといえば、けして多くはないのだ。物語の展開が面白かったとか、結末が洒落てるねとか、脚本が素晴らしいとか、映像が美しいとか、俳優のあの演技が良かったなあとか、いろいろな点から気に入った映画についての印象を私たちは言葉で表すのだけれど、「好き」というのは、アタマでなくハートから発信される言葉。私自身の“好き感覚”に響く人物や、音楽、食べ物などとふれあった時に、思わず胸の内側に生まれる言葉。それが、チャンシルさんのすったもんだの日常風景から引き起こされた。

 
chansil-sub5.jpgアラフォーのチャンシルさん(カン・マルグム)は映画プロデューサーだが、長い間一緒に仕事をしてきた映画監督が突然死。映画製作会社に「あなたの居場所なんてないわよ」と、冷たいひとことで片づけられ、失職してしまう。仕方がないので、倹約のため、独身&恋人・子供なしの身軽さもあって(裏返せば、不安さだが)、一人暮らしの高齢女性ポクシルさん(ユン・ヨジョン)の一間を借りることにした。これがまた、郊外の丘の上にあって不便なことこの上ない。でも、生きていかねばならない彼女は、可愛がっていた若手女優ソフィ(ユン・スンア)の住まいに通う家政婦として働き始めたのだが…。


chansil-sub2.jpgチャンシルさんを演じたカン・マルグムは、華やかな女優オーラ全開タイプではないけれど、ぐんぐん引き寄せられてしまう。姉御肌のようなところがあるかと思えば、けっこう繊細で気の優しいチャンシルさん。生活を立て直そうともがくうちに、“ある出会い”が訪れる。このあたりでは、トキメいたアラフォー女子のカワイさをふりまいてくれる。笑ったり、泣いたり、ちょっと風変わりな大家さんのおばあちゃんの心をつかんだり…。その大変そうな毎日が、実はいろいろな人たちと交わることで、チャンシルさんを本当の志へと導いてくれるのだ。

 
chansil-sub1.jpg幽霊に見えず、幻でもないのだが、自分はレスリー・チャンと言い張る男(キム・ヨンミン)がひょこひょこ登場し、チャンシルさんと交わす会話がとぼけた感じで可笑しい。長くホン・サンス監督のプロデューサーとして活躍してきたキム・チョヒ監督は、自身の体験や思い出をチャンシルさんに投影させているようで、小津安二郎監督作品をはじめ、映画へのオマージュがそこかしこに散りばめられている。このデビュー作を観て、早くも次回作が待ち遠しくなった。


不幸せのどん底に落ちたチャンシルさんになぜ福が多いのか。私は、メーテルリンクの童話『青い鳥』をふと思い出したのだが、監督自身が作詞し、異色のアーティスト、イ・ヒムンが歌うエンディング曲にじっくり耳を傾けてほしい。


(宮田 彩未)

 公式サイト:https://www.reallylikefilms.com/chansil

配給:リアリーライクフィルムズ、キノキネマ

©KIM Cho-hee All RIGHTS RESERVED/ ReallyLikeFilms

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