原題 | Als Hitler das rosa Kaninchen stahl |
---|---|
制作年・国 | 2019年 ドイツ |
上映時間 | 1時間59分 |
原作 | ジュディス・カー(「ヒトラーにぬすまれたももいろうさぎ」講談社刊) |
監督 | カロリーヌ・リンク(『名もなきアフリカの地で』『点子ちゃんとアントン』) |
出演 | リーヴァ・クリマロフキ、オリヴァー・マスッチ、カーラ・ジュリ、マリヌス・ホーマン |
公開日、上映劇場 | 2020年12月4日(金)~シネ・リーブル梅田、12月11日(金)~京都シネマ、シネ・リーブル神戸 他全国順次公開 |
亡命生活を余儀なくされる少女の瑞々しい感性と勇気が珠玉の家族の物語
ドイツの絵本作家ジュディス・カーの自身の体験に基づく児童文学「ヒトラーにぬすまれたももいろうさぎ」の映画化。どんな逆境でも自分らしさを見失うことなく、家族と一緒に強く生き抜く9歳の少女の姿から大きな勇気をもらう必見作。
1933年、ユダヤ人のアンナは、ベルリンで両親と兄のマックスと暮らしていたが、ナチスが政権を握る直前、一家はスイスに亡命することになる。大好きなお手伝いさんと離れ離れになり、見も知らぬ国へと旅立つ。明るい絵を描くようにいわれても、船が沈没するような事故の絵しか思いつけないアンナは、少し変わった女の子。「周りは気にするな。感じたものを描けばいい」という、辛口演劇評論家の父の言葉に導かれ、自由奔放に育つアンナ。その大胆さゆえに、スイスの新しい学校では、男の子たちに石を投げられたり、女の子たちからも冷たくたしなめられたりするが、アンナはめげない。宿の女の子と親友になり、少しずつ異文化にもなじんでいく。しかし、今度はパリに引っ越すことに…。
アンナやマックスは、また新しい言葉をいちから覚え、友達もいないことに文句を言ったり、あまりの空腹に怒りをぶつけたりすることも。そんな子どもたちの不安な思いをしっかり受け止め、どんなときでも揺らぐことのない、深い愛で包み混む両親の姿が静かに描かれ、秀逸。「なんだってできるのよ、一緒にいればね」という母の言葉が、家族のもつ大いなる力を伝える。
そんな両親の愛に守られ、アンナは、自分への自信を培い、自らの足で力強く歩んでいく。前向きな気持ちを忘れず、いつも好奇心でぶつかっていくアンナのみずみずしい感性に心ひかれる。今まで住んでいた家を離れる時、ピアノや家具に触れて、さようならと挨拶をする姿がけなげで、愛おしい。ナチス政権下の暗い世情も入れ込みながら、大事にしていたうさぎのぬいぐるみも家財とともに没収され、故郷に戻れないつらさや、名付け親のユリウスおじさんとの別れも全部乗り越えて、まっすぐ成長していくアンナの姿が初々しく、深い感銘を残す。
(伊藤 久美子)
公式サイト:https://pinkrabbit.ayapro.ne.jp/
配給:彩プロ
(C)2019SOMMERHAUS FLIMPRODAKTION GMBH/
LA SIALA ENTERTAINMENT GMBH/
NEXTFILM FILMPRODAKTION GMBH&CO.KG/
WARNER BROS.ENTERTAINMENT GMBH