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『ホモ・サピエンスの涙』

 
       

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作品データ
原題 英題:ABOUT ENDLESSNESS 原題:OM DET OÄNDLIGA
制作年・国 2019年 スウェーデン=ドイツ=ノルウェー
上映時間 1時間16分
監督 監督・脚本:ロイ・アンダーソン(『散歩する惑星』『愛おしき隣人』『さよなら、人類』) 撮影:ゲルゲイ・パロス 
出演 マッティン・サーネル、タティアーナ・デローナイ、アンデシュ・ヘルストルム
公開日、上映劇場 2020年11月20日(金)~ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、11月27日(金)~京都シネマ ほか全国順次ロードショー!

 

抗いきれない運命に絶望しながらも、人生を問う。

踊らないダンスのような映画。

 

ロイ・アンダーソンというスウェーデンの監督は、『散歩する惑星』『愛おしき隣人』『さよなら、人類』と、つかの間の歓びのために悲しい行為を繰り返す人間(ホモ・サピエンス)を、愚かしくも愛おしい思いからか、一幅の風刺画のようにワンシーンに凝縮して魅せるのを得意としているようだ。今回も、33シーンすべてワンカット。日常の営みの中の人間らしい喜怒哀楽を切り取って、可笑しみのある絵巻物のように綴っている。


homosapi-500-1.jpg人間がどんなに時間に抗おうが、信仰心を失おうが、愛を失おうが、季節は巡り、日はまた昇る。そんな人間たちを俯瞰で見守っているような眼差しの存在が、じわじわと幸福感をもたしてくれる。余計なセリフや音楽を排除した薄いグレーの映像美で魅了する、なんとも不思議な映画だ。


シャガールの絵のような恋人が天空から地上を見下ろしている。9月の黄昏時、南方へ向かう渡り鳥の群れを眺める夫婦。沢山の食材を抱えて階段を上がってくる男。かつての同級生と出会うが、自分より出世しているのが気に入らない。ベッドの下にお金を貯めている男。シャンパンしか飲まないという酒場の女。十字架を背負わされたキリストのように鞭打たれながら街中を歩かされる男、「私の何が悪かったのか?」…そんな夢を見た男とカウンセラー。


homosapi-500-4.jpg市電の中、「自分の望みが分からない」と泣く男。他の乗客に「情けない」と言われ、「泣くことも許されないのか?」とさらに泣くと、「家で泣け!」と。降りしきる雪を眺めながら「素晴らしいよな」と語りかけるが、誰も反応しないカフェでのひととき。信仰心を失くしてアルコール依存症になる牧師。神の声どころか信者の声も聴こえない。患者の不平に為す術もない歯医者。鮮魚市場でいきなり女を殴る男、「俺の愛を知ってるだろう?」。世界征服への夢が砕け散り、呆然とする男。吹雪の荒野、果てしなく続く捕虜たちの行軍。


homosapi-500-3.jpgどれも繋がりが無いようで、自らの運命に呆然と立ちすくむ人々がいる。だが、「さてどうしよう?どう生きる?何が足りない?どうすれば良かったのか?」と常に問いかける意志が底流にある。「私は見た…」というナレーションが最初に入るが、「そう言うあなたは誰?」と視点を変えて本作を観てみると、すべてが反義語になって低迷する人間たちを激励しているようだ。そう感じるのは私だけだろうか?

 

(河田 真喜子)

公式サイト: http://www.bitters.co.jp/homosapi

配給:ビターズ・エンド

© Studio 24

後援:スウェーデン大使館 提供:ビターズ・エンド、スタイルジャム 

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