映画レビュー最新注目映画レビューを、いち早くお届けします。

『家なき子 希望の歌声』

 
       

「家なき子 希望の歌声」メイン.jpg

       
作品データ
原題 Remi sans famille
制作年・国 2018 年 フランス
上映時間 1時間49分
原作 エクトール・アンリ・マロ(「Sans Famille」1878年 フランス)
監督 監督・脚本:アントワーヌ・ブロシエ
出演 ダニエル・オートゥイユ(『愛と宿命の泉』『あるいは裏切りという名の犬』)、マロム・パキン、ジャック・ペラン(『黒い鞄の女』『WATARIDORI』監督)、ヴィルジニー・ルドワイヤン(『マリー・アントワネットに別れを告げて』)、リュディヴィーヌ・サニエ(『スイミングプール』)、ジョナサン・ザッカイ
公開日、上映劇場 2020年11月20日(金)~シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸 他にて全国ロードショー

 

~音楽がもたらす希望の光に導かれる、レミの波乱万丈の旅路~

 

19 世紀末にフランスで書かれた児童文学「家なき子」は、日本でもアニメ化され幅広く親しまれている。それが今回、フランス南西部の古い城壁や小さな村が点在するアキテーヌ地方やミディ運河や、今まであまり知られていないラングドック地方の美しい自然を舞台に、音楽の持つ力を主軸に登場人物の内面性を深めた新たな「家なき子」として完全映画化に成功している。


サブ5_Sans_Famille_J23-270_RET_v2_sRVB.jpg日本アニメーション版「家なき子」のビジュアルにも刺激を受けたというアントワーヌ・ブロシエ監督は、音楽の持つ力を重要な要素に加え、レミとヴィタリス親方との関係性にもより深い情愛が加味されている。天使の歌声を持つ可愛らしいレミをパリオペラ座合唱団のマロム・パキンが、過酷な運命に翻弄されながらも希望を捨てずに生きる健気な少年を熱演。そして、過去の栄華と悲劇を背負いながらも、レミの歌の才能を見出し我が子のように育てるヴィタリス親方をダニエル・オートゥイユが滋味深く演じている。その他、ジャック・ペランやリュデュヴィーヌ・サニエらフランス映画界の名優が脇を固め、19世紀のヨーロッパを描いた本格的な感動のヒューマンドラマである。

 



サブ1_Sans_Famille_J12-278.jpg【STORY】
フランスの南西部の山村で貧しいながらも優しいママ(リュデュヴィーヌ・サニエ)と幸せに暮らしていた11 歳の少年レミ(マロム・パキン)は、パリへ出稼ぎに行っていたパパの帰還で生活が一変する。なんとレミはパリで拾ってきた子で実子ではないというのだ。さらに、旅芸人の親方に30フランで売り飛ばされてしまう。だが、レミを買ったヴィタリス親方(ダニエル・オートゥイユ)は、子供を虐待するような人ではなく、レミの歌の才能を見出し、一流の音楽家にしようと文字を教え大事に育ててくれた。レミは貧しい旅の空の下にあっても、犬のカピ、猿のジョリクールと共に懸命に支え合いながら旅を続けるのであった。


サブ2_Sans_Famille_J52-15-2.jpgある夏の日、ミディ運河に浮かぶ「白鳥号」で体の不自由なリーズと出会い友達になる。イギリスの貴婦人ハーパー夫人にも気に入られ、このままレミを預かりたいという申し出に、「レミは召使いではなく、お嬢様にプロポーズできるような人物になる可能性がある」とヴィタリス親方は断ってしまう。再び一座は旅立ったが、親方の体調がどんどん悪くなり旅を続けるのも困難になってきた。そんな時、レミの実の親に関する知らせがリーズからもたらされ、一縷の望みを持ってロンドンへと向かうが……果たして、レミは無事に実の親に会えるのだろうか?
 



本作の大きな特徴の一つは、原作と大きく違って音楽を主軸に置いていることだろう。レミに歌の才能があり、子守歌そのものが物語の重要なキーとなっていく。レミが歌う子守歌をベースにした交響曲は波乱万丈のレミの旅を優しく見守るように響いてくる。また、宿代のためヴィタリス親方が封印してきたヴァイオリン演奏を披露するシーンでは、鳥肌が立つほどの迫力で魅了する。メンデルスゾーン作曲「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」の運命を切り開く力強さは圧巻!


サブ3_Sans_Famille_J48-138-2_R.jpg二つ目は、生みの親、幼少期の育ての親、将来の展望を持って教育してくれる親の存在。レミは不幸にも悪者に誘拐され捨てられてしまったが、3人の優しい親に恵まれている。特に、ヴィタリス親方はレミを身分を超えた一流の音楽家にしようと自らのスキルを活かして大事に育ててくれる。また、ヴィタリス親方が背負う過去の悲劇も、レミとの絆を深める要素になっている。かつてはスカラ座で満場の喝采を浴びるようなヴァイオリストだったが、妻子を不幸な事故で亡くしてからは、一切の栄華を引きずることなく旅の空の人となっていたのだ。それを名優ダニエル・オートゥイユが切々と語るシーンには、ヴィタリス親方の深い悲しみと贖罪の気持ちが滲み出て胸が締め付けられる。無垢で純真なレミの心を損なうことなく、高みへと押し上げようとするヴィタリス親方の親心に、溢れる涙を抑えることができなかった。

 

(河田 真喜子)

公式サイト:http://ienakiko-movie.com/

配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES

© 2018 JERICO – TF1 DROITS AUDIOVISUELS – TF1 FILMS PRODUCTION – NEXUS FACTORY - UMEDIA

カテゴリ

月別 アーカイブ