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『ノッティングヒルの洋菓子店』

 
       

「ノッティングヒルの洋菓子店」main.jpg

       
作品データ
原題 Love Sarah
制作年・国 2020年 イギリス
上映時間 1時間38分
監督 エリザ・シュローダー
出演 セリア・イムリー、シャノン・ターベット、シェリー・コン、ルパート・ペンリー=ジョーンズ、ビル・パターソン他
公開日、上映劇場 2020年12月4日(金)~ヒューマントラストシネマ有楽町、テアトル梅田、なんばパークスシネマ、シネ・リーブル神戸、順次京都シネマほか全国ロードショー

 

~過去のしがらみを乗り越え、ついえた夢が再び輝きだす~

 

原題の『Love Sarah』は、舞台となる洋菓子店の名前であり、Sarah(サラ)とは、物語の要ともいえる一人の女性の名前である。サラはロンドンで人気を博しているシェフのオットレンギに師事した菓子職人で、ついに念願かなって自分の店を出そうというところだった。だが、彼女はほとんど登場してこない。冒頭の自転車を漕ぐ姿だけ。なぜなら、彼女はその後、不慮の事故で亡くなってしまうから。

 
nottinghill-500-1.jpgいきなりの苦難で映画が始まるので、観客はとまどうかもしれないが、本当の物語はここからだ。共同経営者となるべくワクワクしながら一緒に準備を進めていたサラの親友イザベラ(シェリー・コン)は、あまりの事態に呆然としていた。だが、女は強し。いや、女の意志と結束力は強し。サラの娘クラリッサ(シャノン・ターベット)と、サラの母ミミ(セリア・イムリー)が救世主のように現れ、イザベラの背中を押すようにして一緒に動き出す。さらに、イザベラにとって意外な人物がここに加わる。それは、サラの昔の恋人で、二つ星レストランのスターシェフ・マシュー(ルパート・ペンリー=ジョーンズ)だった…。

 
nottinghill-500-2.jpgノッティングヒルといえば、やはりジュリア・ロバーツとヒュー・グラントが共演した『ノッティングヒルの恋人』(ロジャー・ミッシェル監督、1999年)を思い出す。ロンドンの高級住宅街といったイメージで、お洒落なブティックやレストランも多いと聞く。それでいて、多様な人種、民族が集まってくる場所で、ミミが思いついたスマッシュヒットなアイデアと関係するところが面白く、ある日本のスイーツ(これが日本を代表するスイーツかどうかは意見の分かれるところだが)が、お店の命運を握ってしまうのだ。

 
nottinghill-500-4.jpgサラに対してそれぞれに少しずつ違う思いが、小さな洋菓子店を立ち上げ、成功に持って行こうという共通の思いに協調してゆく。だが、その道のりはけしてイージーなものではない。特に、過去のことが関係し、イザベラとマシューの間には時おり緊張感が走る。それでも、三世代の女と、見た目より気持ちの優しい男の、山を越え、谷を越えの頑張りぶりはあっぱれ。ミミの熟年の恋や、クラリッサの父親探しや、イザベラの忘れていたトキメキなど、甘辛両味のスパイスを効かせたドラマは、見終わった後に温かな余韻を残してくれる。ドイツ出身のエリザ・シュローダー監督は、物語の起伏に登場人物の心情の機微をうまく絡み合わせ、そつのない演出だと思う。

 
nottinghill-500-3.jpg「オットレンギ」が全面協力したというスイーツの数々は、大きなメレンゲやマカロンほか、意外にも見た目かなり素朴な感じ。紅茶の国イギリスでは、スイーツのデザイン性にそれほどこだわらないのか、単にそれが「オットレンギ」の個性なのか(ちなみに、著名シェフのヨタム・オットレンギ氏はイスラエル出身)、そのあたりは不明だが、それでも食いしん坊は映画を見た後にケーキ店に立ち寄りたくなってしまうから困る。

 

(宮田 彩未)

公式サイト:https://nottinghill-movie.com/

配給:アルバトロス・フィルム

(C)FEMME FILMS 2019

 

 

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