原題 | The Keeper |
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制作年・国 | 2018年 イギリス・ドイツ合作 |
上映時間 | 1時間59分 |
監督 | 監督・脚本:マルクス・H・ローゼンミュラー |
出演 | デビッド・クロス、フレイア・メーバー、ジョン・ヘンショウ、ハリー・メリング |
公開日、上映劇場 | 2020年10月23日(金)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 他全国ロードショー |
実在のドイツ人サッカー選手が起こした奇跡とは?
憎しみを超越した果ての幸せと悲しみと
●第二次世界大戦直後、英国サッカーチームで活躍したドイツ人捕虜
近年、映画で“最大の悪役”はナチス・ドイツに違いない。主役によって異なるし、テーマによっても違う。だがナチスの残虐性、異常性は群を抜いている。ナチスの悪虐はこれまで散々描かれてきて、近年ではユダヤ人を救うドイツ人が主役を務める映画も登場した。そんな中で現れた「キーパー」も“融和ムード”につながる一作か。ズバリ異色の「サッカー映画」である。ドイツ人がイギリスで捕虜になり、得意のサッカー技術を生かして身を立てていく奇跡のお話、これが実話という。
ナチスの兵士として第二次大戦を戦っていたバート・トラウトマン(デヴィッド・クロス)は連合国軍の捕虜となり、英ランカシャー収容所に送られる。時は1945年、まもなく収容所で終戦を迎えるが、ドイツの兵士はすぐに帰国出来ず、過酷な労働に従事していた。だが、トラウトマンには抜群の身体能力があった。彼は地元のサッカーチームの監督、ジャック・フライアー(ベン・ヘンショウ)に見出され、試合に出場する。収容所でのゲームでキーパーぶりを見ていた仲間たちは「ナチスとプレー出来るか」と怒りだすが、連敗続きで、スポンサーから見捨てられそうになっていたチームは、彼の数々のスーパーセーブで久々に圧勝。そこから“英国の中のドイツ人”という孤独で困難な闘いが始まる……。
最近まで、不倶戴天の敵だった人間とどう接するかなど分からない。ましてや英国とドイツの感情的軋轢など想像すら出来ない。が様々な困難があっただろうことは想像に難くない。
●結婚、そして英国サッカーリーグでプロの選手として活躍
捕虜たちがドイツへ帰ることになるが、トラウトマンは「チームを助けると約束した」と英国に残る。彼には「戦争か、サッカーかしかなかった。選ぶことは出来なかった」のだ。監督ジャックの娘と結ばれて、強豪マンチェスター・シティへ入団。だが晴れの席で記者たちは容赦ない質問を浴びせる。「自分から軍に志願している」「鉄十字勲章を受けている」…。“ナチスの恐るべき罪”はどこまでもトラウトマンについて回った。超満員のスタジアムでのヤジや大ブーイングはやまなかった。
だが、ユダヤ人コミュニティの代表者が、トラウトマンの素晴らしいプレーを目で確認し声明を発表する。「教団としてはシティへの支持を継続する。ナチスは恐ろしい罪を犯したが、直接加担していない者まで糾弾すれば、我々も加害者になる」。マン・シティの守護神はついに世界の流れを変えたのだった。だが彼の心の奥には、上官による幼児の銃殺を救えなかった、という兵士時代の原罪が心に巣くい、何度も悪夢にうなされる。愛息がアイスクリームを買いに出かけた時、かつて苦しんだ悪夢が現実のものとなる…。
敵対する者同士が、同じフィールドでプレーするのは至難の業に違いない。だが、あり得ないチームプレーを成し遂げさせたのは、やはりサッカーという伝統的な競技の力ではないか。アメリカ生まれの野球とは違う、そこにヨーロッパ人の伝統、底力を感じさせもする。
(安永 五郎)
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/keeper/
配給:松竹
©2018 Lieblingsfilm & Zephyr Films Trautmann