原題 | Matthias et Maxime |
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制作年・国 | 2019年 カナダ |
上映時間 | 2時間 PG12 |
監督 | 【監督・脚本】:グザヴィエ・ドラン(『Mommy/マミー』『たかが世界の終わり』『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』) |
出演 | ガブリエル・ダルメイダ・フレイタス、グザヴィエ・ドラン、ピア・リュック・ファンク、ハリス・ディキンソン、and アンヌ・ドルヴァル(『Mommy/マミー』) |
公開日、上映劇場 | 2020年9月25日(金)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 ほか全国ロードショー |
「ずっと君が好きだった…」声にならない想いを受け止めて!
新たな門出を前に揺れ動く秘めたる想いの美しさよ
今年3月に『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』が公開されたばかりのグザヴィエ・ドラン監督、31歳。早くも最新作『マティアス&マキシム』が公開され、等身大の青年たちの秘めたる恋心に揺れ動くせつなくも美しいラブストーリーで魅了する。ドラン監督は、ルカ・グァダニーノ監督の『君の名前で僕を呼んで』(2017年)を鑑賞後、「しばらく動けないほどに感動した。そして僕自身の20代の頃を思い返した。」と語り、この名作に応えるようにして本作を創ったらしい。もうそれだけで、この映画がいかにグザヴィエ・ドランの想いでいっぱいの映画かがわかるというもの。
30歳を迎え、新天地を求めてオーストラリアへ旅立とうとするマキシム(グザヴィエ・ドラン)は、別れを惜しむように幼馴染らとの時間を楽しんでいた。ある日、リヴェット(ピア・リュック・ファンク)の家で行われたパーティで、マティアス(ガブリエル・ダルメイダ・フレイダス)とマキシムはリヴェットの妹に自主映画のワンシーンに出演してほしいと懇願される。仕方なく応じたシーンは、なんとキスシーン!? 困り果てるマティアスに対し、「学生の頃一度キスしたことあるよ」とマキシムが言うと、「覚えてない」と返すマティアス。他の仲間たちも「覚えてないはずないよな」といぶかるが…。
婚約者も居て、仕事も順調、何ひとつ憂うことなどないマティアスだったが、マキシムへの想いがふつふつと沸きあがり、気持ちを抑えようとすればするほど、苛立ち、邪険な態度をとってしまうのだった。マキシムの方も、マティアスの態度の変化に戸惑いながらも、友情を壊したくなくて想いを秘めたまま旅立とうとしていた。マキシムには右の頬に大きな赤いあざがあり、家庭的にも恵まれた環境とは言えない状況だった。それでも仲間たちは、偏見を持つことなく、また差別することもなく、屈託のない明るく知的なマキシムのことが大好きだったのだ。気まずい想いを抱いたままのマキシムは、あることでマティアスの本当の気持ちを知ることになり……。
グザヴィエ・ドランは、監督デビュー作『マイ・マザー』(2009年)から一貫して「母と子」というテーマを描いてきた。今回も、ドラン作品に欠かせない女優、アンヌ・ドルヴァル演じるアルコール依存症の母親が登場する。息子のご機嫌を取ろうとしたかと思えば悪態をついて殴りかかったりと、そんな修羅場もドランとの呼吸はさすがである。さらに、今回のキャスティングの妙は、実際のドランの友人たちを起用していることだ。パーティで騒いだりじゃれ合ったりケンカしたりと、高校生のようなノリで実に自然体なのだ。
マティアスとマキシムという二人の長年秘めた恋心や仲間たちとの友情物語は、グザヴィエ・ドラン原点回帰を思わせる。言葉ではなく、溢れる想いの衝動や、思わず見つめてしまう熱い眼差しであったり、そんな二人を見守る周囲の人々の優しさだったり、『君の名前で僕を呼んで』とは違って甘さを排除したシリアスな映像美で胸を締め付ける。あの若さでこんな次元の違う映画を撮れるなんて、やっぱグザヴィエ・ドランは天才だ!
(河田 真喜子)
公式サイト:http://www.phantom-film.com/m-m/
配給:ファントム・フィルム
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