映画レビュー最新注目映画レビューを、いち早くお届けします。

『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』

 
       

bringmehome-550.jpg

       
作品データ
原題 Bring Me Home  
制作年・国 2019年 韓国
上映時間 1時間48分
監督 監督・脚本:キム・スンウ(第一回監督作品)
出演 イ・ヨンエ、ユ・ジェミョン、イ・ウォングン、パク・ヘジュン
公開日、上映劇場 2020年9月18日(金)~シネ・リーブル梅田、9月25日(金)~京都シネマ、シネ・リーブル神戸他 全国順次公開

 

宮廷女官チャングムが帰ってきた!

韓国の国民的女優イ・ヨンエの14年ぶりスクリーン復帰作!!

行方不明の我が子を探す母の社会の闇に斬り込むヒューマンサスペンス

 

『JSA』(2000)や『春の日は過ぎゆく』(2001)などで韓国の国民的女優と称されたイ・ヨンエ、現在49歳。その後NHKで放送された韓国時代劇「宮廷女官チャングムの誓い」(2005)で日本でも一躍人気を博した。彼女の優美で毅然とした美しさに誰しもが魅了されたものだ。そんなイ・ヨンエが、『親切なクムジャさん』(2005)以来、14年ぶりにスクリーン復帰したのが『ブリング・ミー・ホーム 尋ね人』である。初監督を務めるキム・ウンス渾身のオリジナル脚本にイ・ヨンエが着目して映画化されたという。行方不明の我が子を探す母親の悲壮なまでの闘いを、結婚・出産を経たイ・ヨンエだからこそ成し得た鬼気迫る演技で観る者の心を突く。


bringmehome-500-2.jpgオープニング、悲壮な表情で潮の引いた海辺を歩くイ・ヨンエの姿に驚かれるかもしれない。だが物語は、そこに至るまでの闘う母親と、そこから輝くような笑顔を取り戻すまでの母親の姿も描かれているので、安心してご覧頂きたい。次々と幼い子供たちが行方不明となっている社会で、不審な扱いを受けている子供がすぐそばに居ても誰も気付かない。そんな世間の無関心さと子供への非情な虐待を浮き彫りにした衝撃作である。


ソウルの病院で看護師をしているジョンヨン(イ・ヨンエ)は、6年前に失踪した当時7歳の息子ユンスの行方を夫のミョングク(パク・ヘジュン)と共に探し続けていた。ボランティア青年の励ましと協力を得ながら捜索していたが、一向に進展がない。そんなある日、心無い者の偽情報により夫が不慮の事故に遭う。優しい夫までいなくなってしまったジョンヨン。さらに、悲嘆にくれる彼女に追い打ちを掛けるようなことが起きるが、「ユンスに似た子供を見た」という有力な情報を得る。ユンスのいくつかの身体的特徴が合致し、「今度こそ!」という思いで郊外の漁村を訪ねることに……。


bringmehome-500-3.jpg漁村にある釣り場へとやってきたジョンヨンだったが、そこの経営者一家と地元の警察官によってユンスに似た子供の存在を否定されてしまう。だが、どうも怪しい。一家の子供だという幼い男の子の様子もおかしい。ひとり密かに調べようとするが、村人は勿論、警察官にまで強硬に拒否されてしまう。こんな所で虐待されているのではないかと心配はつのり、さらに食い下がろうとするが……果たして、ジョンヨンはユンスと再会できるのだろうか?


bringmehome-500-1.jpg人間が持つ貪欲さや悪意に暴力と、社会に潜む闇を容赦ない描写で抉り出してきた韓国映画界。その不気味な迫力たるや他の追随を許さず、韓国映画の大きな特徴でもある。本作もそうした悪意に満ちた人間たちが登場するが、描写は少しだけ控え目である。やはりイ・ヨンエの主演映画だからだろうか。息子を救い出そうとなりふり構わず闘う母親の姿に、同じ年頃の双子の母親でもあるイ・ヨンエの覚悟を感じた。


子供が誘拐されたり、家出によって事件に巻き込まれるケースは世界中で頻発している。その目的は、身代金要求のものは少なく、大半が労働力としてだったり、性的虐待だったり、中には臓器売買のためというものもあり、子供の環境は日々脅かされているのが現状だという。日本も他人ごとではない。子供だけで登下校させている日本でも事件は増えているのだ。「おかしいな」と思ったら、状況を確認した上で子供に声を掛けてみるとか、空振りでも構わないので警察に通報するとか、我が子だけでなく他所の子供でも、もっと関心をもって見守る必要があると実感した

 

 

(河田 真喜子)

公式サイト:https://maxam.jp/bringmehome/
配給:ザジフィルムズ、マクザム
© 2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

 

カテゴリ

月別 アーカイブ