原題 | Pavarotti |
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制作年・国 | 2019年 イギリス・アメリカ |
上映時間 | 1時間55分 |
監督 | ロン・ハワード |
出演 | ルチアーノ・パヴァロッティ、ズービン・メータ、ホセ・カレーラス、プラシド・ドミンゴ、ボノ他 |
公開日、上映劇場 | 2020年9月4日(金)~TOHOシネマズシャンテ、TOHOシネマズなんば、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ二条、シネ・リーブル神戸 ほか全国ロードショー |
圧倒的な歌声と数々のインタビューから聞こえてくる、
彼の心の裏声とは?
ルチアーノ・パヴァロッティは稀有な存在だった。ほんの一声耳にしただけで、彼の歌声だとわかる、独特の持ち味。舞台上で見せたイタリアの太陽のようなあの笑顔。ロン・ハワード監督が手掛けた3本目の音楽ドキュメンタリーは、2007年にこの世を去ったパヴァロッティの公私にわたる貴重な映像と、彼をよく知る人々が語るさまざまなエピソードで構成された、非常に見応え・聴き応えのある内容となっている。
数字的には、アルバム売上総数1億枚、観客動員数1千万人超えといわれる、クラシック音楽界の超人であるが、この映画で改めて彼の歌声に触れると、『人の心にまっすぐに届く声』なんだなあと思う。そのような声の魅力をいち早く見抜いたのが彼のお母さんだったという。そして、彼は一時小学校の教師をしていたが、後年、“キング・オブ・ハイC”と称賛されるオペラ歌手への道を拓き始める。テノールとは、“作られた声”だというから、その努力はどれほどのものであったろうか。
本作はパヴァロッティの故郷イタリア・モデナにあるパヴァロッティ博物館の全面的な協力のもとに完成したが、その館長とは2番目の妻ニコレッタ・マントヴァーニである。その恋愛と結婚のスキャンダルないきさつも含め、映画はパヴァロッティの恋愛観にも迫ろうとする。親しい友人関係を築いたあのダイアナ妃にも、ステージ上から彼らしい“ご挨拶”を送る。だが、単なる女好きというのではなく、彼が築いた女性たちとの関係には、何やらもっと深いものが存在しているように思えて、このように愛することの非凡について考えてみたくもなるのだ。
ハワード監督は、あの有名な3大テノールの舞台や、ロックやポップスのミュージシャンたちと共演したチャリティ・コンサート『パヴァロッティ&フレンズ』など大きな見せ場を用意しながらも、一貫してじっと見つめ、追い求めているのは、パヴァロッティの人生そのものの音調である。世界的な名声と成功をかちとり、熱烈に恋愛し、慈善活動に目覚め、晩年には世間のさまざまな雑音にさらされた彼。あけっぴろげな笑顔の奥に何が在ったのか。それは、見る者それぞれが感じ取るしかなく、そういう余白があるのは、イイ映画の条件の一つであると私は思う。
アカデミー賞®で3度も栄冠に輝いた録音のスペシャリスト、クリストファー・ジェンキンズが最先端技術を駆使し、映画館を歌劇場に変えてくれるだろう。パヴァロッティの凄さを知る人も知らない人も、神からの贈り物といわれる歌声にどっぷりと浸ってほしい。
(宮田 彩未)
公式サイト: https://gaga.ne.jp/pavarotti/
配給:ギャガ
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