原題 | Midway |
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制作年・国 | 2019 年 アメリカ |
上映時間 | 2 時間 18 分 |
監督 | 監督・製作:ローランド・エメリッヒ 脚本:ウェス・トゥーク 製作:ハラルド・クローサー |
出演 | エド・スクライン、パトリック・ウィルソン、ルーク・エヴァンス、アーロン・エッカート、豊川悦司、浅野忠信、國村隼、マンディ・ムーア、デニス・クエイド、 ウディ・ハレルソン |
公開日、上映劇場 | 2020年9月11日(金)~ TOHOシネマズ梅田 他 全国ロードショー |
~日本 VS アメリカ、太平洋戦争 最大の戦局の真実~
●「真珠湾」から「ミッドウェイ」へ
終戦直後の生まれでも、戦争映画は“過去のもの”に違いない。だが、今もしばしばニュースとして報じられる(先の「黒い雨」裁判など)のように、現代に直結した時代でもある。
過去、太平洋戦争の劇映画は数多く作られてきた。悲惨な戦争への抗議や反戦映画、中には戦争を賛美するような作品もあった。近年、盛んに作られる戦争映画は「正確に史実を捉え直そう」という“新しい戦争映画”と言える。
日本軍の真珠湾攻撃を大スケールで描いた「パールハーバー」(01年)しかり、近く公開される「ミッドウェイ」はその続き。第二次世界大戦の重要局面、日米の3日間にわたる激突を再現。現代の特撮技術を駆使したド迫力映像=リアリティがこれまでの映画とはかなり違う。
1942年(昭和17年)、北太平洋のハワイ諸島北西のミッドウェイ島に集結した日本海軍は「ここで一気にカタを付ける」気迫に満ちていた。世界最大の大和を含む超弩級の戦艦に巨大空母、戦闘機、急降下爆撃機に潜水艦が総出動。空に海に、海中まで戦場になった事実上“最後の決戦”。その3日間にわたる日米両国の闘いの全貌を描こうとする画期的な試みだ。
●わずか半年間の優勢
実は日本軍が圧倒的に優位だったのは、真珠湾(1941年12月)からミッドウェイ海戦(1942年6月)までの半年間。大国アメリカ相手にこんな無謀な戦争を仕掛けた、と多くの人々(一部良識人)が思ったのはいうまでもない。真珠湾での奇襲成功以来、勝った勝ったと祝勝ムードに酔っていた日本に冷や水を浴びせかけたのがミッドウェイ海戦。この海戦で日本海軍は航空母艦4隻、航空機を推定で285機を失い、それ以上に多数の熟練パイロットを失った。これ以降、日米の海軍航空兵力が逆転する。映画でも“主役級”のニミッツ太平洋地域最高司令官は「我々は道半ば(ミッドウェイ)に達した」と宣言した、という。
●「大本営発表」はフェイクニュースの元祖
確かにミッドウェイ海戦は“古い話”ではあるが昨年、日本経済界新聞1面コラムに「フェイクニュースの元祖」として「旧日本軍の大本営発表」を挙げている。ミッドウェイ海戦でも「敵機多数撃墜。我が方の損害軽微なり」といった常套句はほとんどが嘘だった。空母4隻失ったのに「空母1隻喪失、大破」とは…。真珠湾の奇襲成功からまだ半年、国民は浮かれ気分のまま、大本営発表を信じ込み、破滅への道を歩んでいった、としている。その時の沈没戦艦「赤城」とみられる船影が見つかったと米調査チームが発表した、という。ミッドウェイは“歴史の彼方”ではなかったのだ。
驚いたのは「昭和天皇の避難シーン」。冒頭、米ドゥーリトル中佐の攻撃隊による東京空襲の警報が発令され、昭和天皇が側近に促されて皇居内の防空壕に避難する。“神国日本”が「国体」を脅かされ、恐怖した歴史的事実を象徴していた。その2カ月後だから日本海軍の気合の入れ具合が分かろうというものだ。
●構想20年、日米の海軍軍人たちに捧げる鎮魂歌
『インデイペンス・デイ』などで知られるローランド・エメリッヒ監督は20年間もの間、ミッドウェイ海戦の映画化を願い続けてきたという。「アメリカやヨーロッパでナショナリズムが台頭してきている。多くの苦難があり、大勢の人々が命を落とした。でも、彼らの死には理由があった」と語る。日米双方への平等な視点はドイツ出身監督ならでは。史実に忠実に描いたこの映画を「日米の海軍軍人に捧げる内容」というのは紛れもない本心だろう。
(安永 五郎)
公式サイト:http://midway-movie.jp/
配給:キノフィルムズ|木下グループ
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