原題 | Aos olhos de Ernesto |
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制作年・国 | 2019年 ブラジル |
上映時間 | 2時間03分 |
監督 | 監督・脚本:アナ・ルイーザ・アゼヴェード 共同脚本:ジョルジ・フルタード |
出演 | ホルヘ・ボラーニ、ガブリエラ・ポエステル、ジュリオ・アンドラーヂ、ホルヘ・デリア、グロリア・デマシ、アウレア・バプティスタ、マルコス・コルトレーラス |
公開日、上映劇場 | 2020年7月31日(金)~シネ・リーブル梅田、京都シネマ、シネ・リーブル神戸他 全国順次公開 |
――本当に大切な人に素直な気持ちを伝えてますか?――
人生の“たそがれ時”を迎えたからこそ、本当にやりたかった事に挑戦できる!
“ぶあいそうな手紙”なんて、筆不精な筆者にとっては取っ付きにくいタイトル。ところが、「拝啓」「前略」で始まる定型文を“ぶあいそう”だと断罪してくれるのだ、この映画では。なんでもスマホで済ませてしまう昨今、手紙を書くこと自体が「黒電話」と同じように過去の遺物と化してしまっているようだ。だが、形式はともかく、メールと同じようなフランクな口語体で素直な気持ちを手紙に書いてみると、これがまた同じ言葉でも重みを増して、強い繋がりを感じられるから不思議だ。
ブラジルから届いた“ぶあいそうな手紙”は、「人生を静かに終えるだけ」と半ば諦め気味に生きていた78歳の老人と、誰からも大切にされず「人恋しさ」だけで変な男とくっついたりしている24歳の若い女性との、なんとも奇妙な友情が巻き起こす奇跡の物語。世代も違えば価値観も違う。得意なものも好きなことも正反対。そんな二人が、お互いに欠けているものをフォローし合うと、人生の歯車が再び動き始める。「人生、捨てたもんじゃない!」「人生に遅すぎることなんてない!」と、映画から幾度も励まされてきたが、今回もユーモアと優しさあふれる言葉のシャワーで、自分が本当にやりたいこと、伝えたい気持ちを、素直に考えさせてくれる作品である。
ウルグアイ出身のエルネスト(ホルヘ・ボラーニ)は、ブラジルのポルトアレグレという町に住む78歳の独居老人。近年益々目が悪くなって新聞も読めない有り様。そこで、サンパウロに住む一人息子のラミオ(ジュリオ・アンドラーヂ)が一緒に住むために父親のアパートを売ろうとするが、エルネストは一向に気が乗らない。ある日、ウルグアイに住む古い友人の妻・ルシアから手紙が届く。同年代の隣室のハビエル(ホルヘ・デリア)に手紙を読んでもらおうとするが、要らぬ事を言っては茶化すものだから、真面目なエルネストは「もういいっ!」と怒って中断させてしまう。そこで定期的に来てくれるヘルパーさんに続きを読んでもらおうとするが、彼女はスペイン語が読めない。そう、ブラジルはポルトガル語で、ウルグアイはアルゼンチンに近いスペイン語なのだ。
どうしても読みたい!ある日ひょんなことで知り合った若い女性・ビア(ガブリエラ・ポエステル)に頼んでみると、ビンゴ!やっと、懐かしいルシアと繋がった喜びに興奮するエルネスト。さらに返事を書こうとビアに代筆を頼むが、エルネストが発する言葉はどれもよそよそしく堅苦しいものばかり。「夫を亡くして嘆き悲しむ人が欲しいのは、優しい言葉と気持ち。そんなの“ぶあいそう”よ」とビアにダメ出しされてしまう。さすがの頑固者のエルネストも、ビアには逆らえない。
エルネストが青春時代を過ごしたウルグアイからの手紙は、封印していた過去や忘れていた気持ちを少しずつ掘り起こしてくれる。それと同時に、訳ありなビアのとんでもない事情も露呈していくが、それらを優しく見守るエルネスト。老人と若者のギャップを埋めようとする交流は、次第に孤独な二人の人生に光が差し込んでいき、……。
飄々としたエルネスト役のホルヘ・ボラーニはウルグアイ出身、怪しげなビア役のガブリエラ・ポエステルはブラジル人、おせっかいな隣人・ハビエル役のホルヘ・デリアはアルゼンチン出身。3人が醸し出すアンサンブルは、人生を愛おしむ優しさと陽気さであふれている。ひとりでは踏み出せず諦めていた多くのことを、誰かが背中を推してくれることで実現できることもある。「もう失うものなどない」と悟った“人生のたそがれ時”を迎えたからこそ、やりたいことを実現させられるチャンス!きっと、ブラジルから届いたラブレターに勇気付けられるに違いない。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://www.moviola.jp/buaiso/
配給:ムヴィオラ
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