原題 | Grâce à Dieu |
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制作年・国 | 2019年 フランス |
上映時間 | 2時間17分 |
監督 | 監督・脚本:フランソワ・オゾン (『8人の女たち』『スイミング・プール』『しあわせの雨傘』』『彼は秘密の女ともだち』『2重螺旋の恋人』等) |
出演 | メルヴィル・プポー(『ぼくを葬る』『ムースの隠遁』『わたしはロランス』)、ドゥニ・メノーシェ(『危険なプロット』『ジュリアン』)、スワン・アルロー(『美しき棘』『ブラッディ・ミルク』)、ジョジアーヌ・バラスコ、エレーヌ・ヴァンサン |
公開日、上映劇場 | 2020年7月17日(金)~ヒューマントラストシネマ渋谷、なんばパークスシネマ、テアトル梅田、アップリンク京都、シネ・リーブル神戸ほか 全国ロードショー |
受賞歴 | 第69回ベルリン国際映画祭 銀熊賞(審査員グランプリ)受賞! |
フランスを震撼させた、神⽗による児童への性的虐待事件。
性的虐待のトラウマを抱えて生きる人々の強さと勇気と――。
カトリック教会の神父による性的虐待事件を扱った映画と言えば、トム・マッカーシー監督の『スポットライト 世紀のスクープ』(2015年アメリカ)が記憶に新しい。ボストン・グローブ社の記者たちの執念で究明した大スクープをベースにした力作で、第88回アカデミー賞作品賞&脚本賞に輝いている。今回のフランソワ・オゾン監督の最新作『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』は、子供の頃に性的虐待を受けた被害者たちが、勇気を振り絞って責任追及の声をあげ、告訴へと持ち込むまでを、一人ひとりの苦悩や葛藤を丁寧に掬い取りながら描いた衝撃作である。
フランソワ・オゾン監督は、今までは人間社会の多様性を独特な映像美と語り口で魅了してきた多才な監督だ。そんな彼が今回取り組んだのは、フランスを震撼させた「プレナ神父事件」。最初はドキュメンタリーにする予定だったようだが、被害者たちと面談してみて、彼らは今までマスコミのインタビューを何度も受けてきて、映画化するならアメリカ映画の『スポットライト』のような作品にしてほしいと要望があったそうだ。そこで、オゾン監督自ら脚本を手掛け、メルヴィル・プポーを主演に映画化。ただ、実際にその裁判は現在も係争中ということで、フランス公開時にも教会側から上映差し止めの訴えが起こされたいう。それは認められず、2019年のベルリン国際映画祭 銀熊賞(審査員グランプリ)受賞の発表後、2019年2月20日から公開されて大反響を呼ぶ。そのためか、劇中に張り詰めた緊張感にはただならぬものがある。
リヨンで生まれ育ったアレクサンドル(メルビル・プポー)は、美しい妻と5人の子供のいる敬虔なクリスチャン。彼にとって教会は、ミサや家族の洗礼式や聖体拝礼の儀式など、生活の重要行事を担う存在だった。ところが、ある日公園で子供を遊ばせていると、他の子の父親から、「子供の頃、自分に性的虐待をしたプレナ神父が、今でも子供たちに聖書を教えている」と聞かされ、衝撃を受ける。「自分もそうだった!」と、封印してきた忌まわしい記憶がよみがり、「愛する我が子にも危害が及ぶかもしれない。そんな危険人物が未だに教会の要職に就いているなんて!」――怒りと恐怖のなか勇気を出して、リヨンの街を一望するフルビエールの丘の上にそびえたつ、フランスカトリック教会の総本山の枢機卿に訴え出たのである。
教会側はアレクサンドルの訴えを丁寧に聴き取り、その事実を認めた上で、プレナ神父本人と面会させて謝罪させる機会を与える。だが、アレクサンドルさえ納得させればいいと思ったのか、責任の追及や処分もないまま沈黙してしまう。そこで、アレクサンドルは警察へ告発し、2016年1月から捜査が始まる。それからというもの、教会側の思惑とは逆に、インターネットやSNSを通じて同じ虐待を受けた人々が次々と名乗り出てきて、一つの組織を作り上げてしまう。マスコミにも取り上げられ世間の注目を集めるようになり、教会側も事件の責任から逃れられなくなる。
被害者の一人・フランソワ(ドゥニ・メノーシェ)の両親が保管していた当時の関係資料が告訴のための重要な足がかりとなるが、起訴に持ち込むには時効という壁が立ちはだかる。それでも、彼らより若い被害者・エマニュエル(スワン・アルロー)の出現により正式な告訴へ持ち込むことに成功し、教会裁判と司法裁判の両方で審議されることになる。世界最大の組織、カトリック教会相手に訴えるとは、ネット社会の現代ならでは影響力が背景にあることは言うまでもないが、彼らの人生を賭けた信念の強さこそが、「アリの一穴」となったように思う。
10歳前後の少年をお気に入りとして、ボーイスカウトのキャンプなどで性的虐待を繰り返していたプレナ神父。どれほど精神的苦痛を与えたことか。大人になってからもトラウマに苦しめられ、口を閉ざす者も多い中、過去に決着をつけ、前へ踏み出すために行動を起こした人々の勇気に賛辞を贈りたい。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://www.graceofgod-movie.com
提供:キノフィルムズ 配給:キノフィルムズ/東京テアトル G
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