原題 | Britt-Marie var här |
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制作年・国 | 2019年 スウェーデン |
上映時間 | 1時間37分 |
原作 | フレドリック・バックマン 小説「ブリット=マリーはここにいた」(坂本あおい 訳/早川書房 刊) |
監督 | ツヴァ・ノヴォトニー(『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』『ヒトラーに屈しなかった国王』出演) |
出演 | ペルニラ・アウグスト(『愛の風景』『スター・ウォーズ』シリーズ)、ペーター・ハーバー(『真夜中のゆりかご』『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』)、アンデシュ・モッスリング(『テルマ』)ほか |
公開日、上映劇場 | 2020年7月17日(金)~新宿ピカデリー、YEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹ほか全国ロードショー |
人生、どう生きる?
自分のために選択して生きる喜び
最近、「やり直すのに遅すぎることはない!」を標語にしたような映画が多くなってきた。『ロンドン、人生はじめます』(‘17)、『輝ける人生』(‘18)や『イーディ、83歳 はじめての山登り』(‘19)『ぶあいそうな手紙』(‘20)等々。本作は、日本でもスマッシュヒットを飛ばした映画『幸せなひとりぼっち』の原作者で、スウェーデンのベストセラー作家フレドリック・バックマンの最新作「ブリット=マリーはここにいた」の映画化である。若手女性監督のツヴァ・ノヴォトニーが、夫に裏切られた主婦が直面する人生の意義と選択について、多用化する社会を背景に活き活きとコミカルに描き出している。
子供のいない専業主婦のブリット=マリー(ペルニラ・アウグスト)、63歳。お掃除得意な几帳面な性格で、様々な手料理で食卓を彩る完璧な主婦。だが、地味で愛想なく、夫(ペーター・ハーバー)との会話もない。ある日、夫が心臓発作で倒れたという知らせを受けて入院先へ駆け付けると、そこには見知らぬ女が…ブリット=マリーより若くてセクシーな女が…そう、夫には愛人がいたのだ!すぐさま、スーツケースひとつで家を出るブリット=マリー。だが、行く当てもなければ、この歳では働き口もない。そんな彼女が見出した新しい人生とは?
主演は、デンマークの巨匠ヴィレ・アウグスト監督(『ペレ』や『愛の風景』『リスボンに誘われて』等)の妻でもあるスウェーデンの国民的女優ペルニラ・アウグスト。家を出て、ひとりになって初めて知る「自分のために選択して生きる喜び」を、シャイな表情で味わい深く表現。やっと手にした田舎町のユースセンターでの慣れない仕事に戸惑い、移民が多く住む町の人々やサッカーチームの子供たちに励まされながら、自分の存在価値を初めて実感していくブリット=マリー。
本作は、夫の不貞に対する恨み辛みより、自らの意志で生きて来なかったブリット=マリーの「後悔」と、新たな人生に生きる喜びを見出した「再生」を謳いあげている。中でも、連れ戻しに来た夫に、「共に暮らした40年をムダにしてもいいのか?」と詰め寄られ、ブリット=マリーが初めて真意を吐露するシーンがいい。「誰かに認めてほしかった。気遣ってほしかった」と。さらに、ブリット=マリーと妻に浮気されて離婚した警官(アンデシュ・モッスリング)との微妙な雰囲気にもご注目。世の中、「捨てる神あれば、拾う神あり」でうまく回っているもんだ。
さらに、子供の頃から抱えてきたトラウマに対峙し、「どんな大人になりたかったのか?」「憧れていたものとは?」「まだ遅くはない!」と素直な気持ちを取り戻し、あの仏頂面のブリット=マリーが別人のような輝きを見せていくのだ。観ているこちらまで、「ささやかながらも喜びのある人生を送りたい」と心から願わずにはおられなくなる、人生応援歌のような映画である。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ https://bm-hitoridachi.tumblr.com/
配給:松竹
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後援:スウェーデン大使館